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第63回 ゆのみん企画【海賊】海賊に恋をして 1

『船長にこれをっ!!
これだけでいいのです!!
ぜひ……ぜひ船長にっ!!!』


チャンミンは必死になって叫んだ。

甲板の上から船長室を見上げ、
手にした料理を掲げ、
必死になって叫ぶ。


『お前の様な見習い人が作った料理など、
船長に出せるかっ!!

船長は今、刺客から受けた傷の治癒に入っている。
この船に乗ったばかりのお前なんぞ、
黙って皿でも洗ってろ!!』


副船長に怒鳴りつけられ、
一瞬怯んだチャンミンだったが、
どうしても船長に…これを届けたかった。


ここは海の上…

チャンミンが乗っているこの船は…

海賊船だった…。


海岸を拠点とし、
海から海へ。

しかし海賊船と言っても、
略奪を目的としたものではなく、
あくまでも国の治安の為に密に組織された船であった。

警固料の取り立てを行い、
船舶運行の警護を担っている。

とは言っても、

他国からの侵略も多く、
刺客に狙われる事も日常茶飯事…。


チャンミンはそんな船の見習い料理人としてこの船に乗ったばかりだった。




滅多に甲板の上には出ない。


黙々と見習いの仕事をこなし、
皿洗い、皮むき、その他の雑用に明け暮れる毎日であった。






チャンミンはこの船に乗ったのは1か月前……。


もともとチャンミンは街の片隅で屋台を出して生計を立てていた。

家は貧しく、
それでいて両親は早くに他界。

天涯孤独の身でありながら、
チャンミンは幼い頃から料理には長けていた。

自分に出来る唯一の事。

それが料理だった。


その日も何ら変わらず、
チャンミンは店を出す。


『チャンミンの作った串焼きは最高だ!!
あのタレが堪らん!!』

そこそこお客も付いている事もあって、
作った料理が残る事はない。


それでも仕入れた食材に対して、
安い売値。

正直、チャンミンの儲けはほとんどなかったが、
自分の料理を美味しそうに頬張る人の笑顔が、

チャンミンにとって幸せな時間であった。




そんな毎日が一変する出来事が起きる。



街に現れた海賊の一味によって、
チャンミンの屋台は無残にも焼かれてしまう。

海賊と海賊の縄張り争い…。

そのおかげで街も壊滅。



自分の料理を食べてくれた人々の笑顔も消え、

チャンミンは唯一の場所を失ったのである。



焼かれて灰になった自分の屋台の前。


チャンミンはたった一つだけ、
大切な物を抱えていた。


それは、

母が自分に教えてくれたあのタレ……。


ずっとずっと大切にしてきたこの壺だけは決して離さなかったのだ。



『母さんっ……全部……失くすところ……だったよ……
これまで失ったら……僕はっ……僕は……』


屋台の前に、
膝から崩れ落ちるチャンミン……。



行き交う人は、
自分の身だけを案じ、
チャンミンには見向きもしない。


道路には怪我をして倒れている人……

あちらこちらで上がる火に……




チャンミンは声を殺して泣くのであった。





『……それは…お前の屋台…か…?』



不意に誰かに声を掛けられる。


『焼かれた…のか……?』



『………はい』



『すまなかった………』



その声にチャンミンがゆっくりと振り返る。



そこに立っていたのは、


自分の着ている服なんかぼろ雑巾の様に感じるくらいに眩い光を放ち、

誰が見ても………身分の違う人間が立っていた。


手には剣。


襟足も長く、
束ねた髪は細い赤いリボンで束ねられ、
流れる前髪でその目ははっきりと見えない………



……海賊……か……



この海賊同士の争いで焼かれた街…

自分の…大切な屋台……


チャンミンは自分がこの先どうなっても構わないと、


その人間を睨み上げた。


『お前…たちのせいで………

お前たちのせいでこの街は消えた!!!

僕の……僕のたった一つの居場所だったのに!!

海賊なんか……海賊なんか消えてしまえっ!!!』



そう叫びながら、
チャンミンはその者にとびかかる。


呆気なく囚われた腕。


『すまなかった……巻き込むつもりはっ!!』



そう言ったとたん、


その者にチャンミンの身体は突き飛ばされた。



チャンミンは焼かれた屋台にその身を叩きつけるが、

次の瞬間に目に入った光景にその身を震わす。



さっき自分に話しかけて来たあの海賊が、

3人の男に囲まれ、
その剣で戦っている。


次々に振り下ろされる剣をかわし、
自分は決して斬る事なく、
剣首で確実に倒していく。


『船長!!!』


後から来た者がそう叫び応戦した。



切られそうになる仲間の為に立ち向かう姿は、

何よりも勇ましく、
そして…流れる様な動きにチャンミンは釘付けとなる。


その場から動けずにいたチャンミンの目に、


キラリと光る何かが向けられた。




『へへ……この際、何人斬ったかで……俺の価値も上がるかな……』


そう言いながら、
チャンミンに向けられた剣が一気に振り下ろされる……




もう…ダメだっ!!



チャンミンが目を閉じた瞬間、




『ぐはっ…!!』



悲痛な声がチャンミンに届く。



自分に変化はない。


ゆっくりと開いた目に飛び込んできたのは、


先ほど声を掛けてきた男の顔………



苦痛に顔を歪め、

それでも、


『だいじょう……ぶか……お前……』



そう言って悲しく微笑み、

スローモーションの様に膝から崩れ落ちた。



『船長!!!
ユノ船長!!!!』



仲間の大きな声と共に、
その屈強な身体が担がれる。



『俺は……大丈夫……だ……
こんな傷…大した事はない。

………あいつも………一緒に船に………』



そう言って、
チャンミンを見つめる船長と呼ばれた人……。


チャンミンはガタガタと震える身体を支えられ、

担がれたその大きな背中を見ながら、

初めて船へと乗り込んだのであった………










これから始まる長い長い航海……。




これがチャンミンとユノとの出会いであった。




あとがき。

『海賊』と言うお題を聞いて、
突発的に妄想したお話。

こちらは3~5話で完結予定です。

メインは、
ただいま本館で連載中の執事のお話なので、
こちらは不定期で更新します。

宜しければお付き合い下さい♥

優月///

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