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第63回ゆのみん企画【海賊】海賊に恋をして 2

住み慣れた街を出て初めて船に乗ったチャンミン。


罵声の様な声が響き渡る甲板で、
チャンミンは1歩も踏み出せない程の放心状態で、
船尾に立ち尽くしていた。


先ほど自分を庇ってくれた船長と呼ばれていた人は、

そのままどこかの部屋に連れて行かれ、
チャンミンは震えて上手く歩けない足まま、、
船尾に放り出されたのであった。




ただただ呆然とするチャンミン。




目の前の光景から目を逸らし、
ゆっくりと街に向かって振り返ると、
そこには灰色の街……



住み慣れた自分の街は…すっかり焼け落ち、
灰色に染まっていたのだ。



大切にしてきた屋台も焼かれ、
家もすでに焼き払われているだろう…。


自分が今手にしているのは、

この壺…のみ。


目の前の現実が、
自分の視界から心の奥に流れて来る。


それを感じると同時に、

チャンミンは膝からガクリと崩れ落ちた。


……どうしてこんな事に……



街へ向けていた目線を力なく甲板へ戻すと、

見つめる先には憎き海賊たち。


それぞれを象徴する様に着飾る者たち。

大きな剣を背中に背負い、
ある物は勲章の様に手にした金銀を高らかに上げている。


負傷した者、
もしかしたら…すでに息絶えた者もいるのではないかと思われるほど、
甲板の上は騒然としていた。


時に自分を睨みつける者もいる中で、
チャンミンは壺を抱えたままその身を小さくした。

自分の存在を消すよう、
決して顔を上げる事なく深く俯きながら、
たった一つの宝である壺を包んで、


チャンミンは声を殺して泣いた……。



この先の自分の未来。

連れてこられた海賊船。


名を知るものも、
自分を気にかけてくれる人も居ない海賊船の上で、


チャンミンは決して小さくない身体を折り曲げ、



『父さんっ……母さんっ!!』



チャンミンは震える身体を必死になって包み込んでいた。







それからほどなくし、


『おい。船長がお呼びだ。』



その声にゆっくりと顔をあげたチャンミン。



そこには仏頂面で声を発する海賊。


応戦してきたあの海賊が、

チャンミンを見下ろしていたのだ。




『そんなに怯えるな。お前だっていっちょ前の男だろ。
そんな女みたいな顔するんじゃねぇ。

船長室に案内する。来いっ!!』


そう言って、

自分の顔をくいっとあげ、
チャンミンに行き場を諭す。


チャンミンは迷いながらも腰を上げたが、
すぐにその身体は崩れ落ちる。


『ったく……しょうがねぇなぁ…』


そう言ってチャンミンの腕を取り、
立ち上がらせようとした途端、

腕の中の壺がぐらりと揺れる。



『あっ!』



チャンミンは咄嗟に壺を抱き直す。


『ふんっ!そんなもん、この船には必要ねぇ!!』


そう言ってチャンミンの腕から奪い取ろうとしたが、



『やめろ!!触れるなっ!!』



チャンミンは必死になって壺を抱きしめ、
その海賊を睨み上げた。


『くだらねぇ。まぁいい。

とっとと行くぞ!』


チャンミンは引きずられるようにその男に連れられて行く。












『入れ。この中で船長が休まれている。

ここは低俗な人間が入れる様な場所ではない。

お前如きを入れるなんぞ、俺には理解できねぇが……

とにかく入れ。

但し…その泣きっ面だけは何とかしろ。』


そう言って船長室と書かれた部屋の前に置き去りにされるチャンミン。





赤い絨毯。

豪華なダイアモンド調のドアノブ。

煌びやかなその大きなドアの前で、
チャンミンは小さく声を出す。




『あの……すっ……すいません………』


中からの返事はない。



チャンミンは右腕で壺を抱え、
ノックをした。




『…すいま……せん……』





『……入れ。』




ようやく聞こえた声は…どこか弱々しい。





『…はい…失礼…します。』



ゆっくりと開けたドア。




その奥に広がったのはチャンミンが見た事のない世界。



アンティークの家具が並び、

廊下よりも豪華な絨毯が敷き詰められている部屋の中。


その一番奥に見えるのは天蓋ベット……


クイーンサイズと思われるベットに横たわっていたのは、




あの…船長……




上半身は裸ながら、
肩から胸にかけて何重にも巻かれている包帯。


大きなクッションに背を預け、
目を閉じている船長がカーテン越しに見えた。





『…あの…先ほどは…助けて頂いて……』



それを言うのが精一杯だった。


自分の街を焼き払い、
何より大切だった屋台さえも失ったチャンミン。



睨み上げ暴言を吐いた相手に、



……自分は救われた。





今、目の前にいるこの憎き海賊に、
チャンミンは確かに命を救われていたのだ。




チャンミンの言葉にゆっくりと伏せていた瞳を上げたユノ。




『…怪我はないか……?』

カーテン越しのユノがそっと呟く。


『はい……おかげ様で……助けて頂いて……』


『それは…良かった。』


『…………』







『すまなかったな……』






憎いはずの海賊が発した言葉。

その身を盾にして自分を守ってくれたこの海賊。


チャンミンは心の内をどう言葉にしていいのか分からないまま、

静寂だけがこの部屋を包み込む。



『…もう少し…こっちへ……』


天蓋のカーテンでその姿ははっきりとは見えなかったが、

チャンミンはその言葉にゆっくりと足を進める。


ふかふかな絨毯からは自分の足音さえも聞こえない。




静寂の中、

チャンミンはカーテンの隙間に見えたその瞳に……


一瞬で目を奪われた。





そこに居た海賊は…あまりに綺麗…だったのだ。


切れ長の目に、
それでいて存在感のある眉。

そして鼻筋から顎にかけてのラインはまるで彫刻の様だった。



この人は…本当に…海賊か……?



あまりの美しさにチャンミンは言葉を失う。




『お前…名は……?』


やや血色を失っていたその唇が開き、
漆黒の瞳がチャンミンを捉える。


『……チャンミン……シム…チャンミン……』


『チャンミンか…良い名だな…俺は…ユノだ。この船の船長…だ…』




そう言いながら、
クッションに預けていた背を浮かせ、
ユノはゆっくりと起き上がる。

時に痛みに顔を歪めながらも、
しっかりとチャンミンを見据える。



『チャンミン…。
この船で働け。
お前の面倒は俺がみる。
いいな…』



それはあまりに突然の言葉。


自分は下級以下の人間。

みすぼらしい恰好に、
汚れた顔。

剣すら持った事のない自分が…海賊に…?




自分はこのまま、
この船の海賊どもに殺されるものだと思っていた。


小さな街の下級の人間である自分を守り、
この船長は傷付いた。



きっと自分は海にでも投げ出されるのだろう。



そう思っていたチャンミンにとって、

ユノから発せられた言葉は想像すらしていなかった事。






『この船で、俺に仕えるんだ。』



『僕が……仕える……?

海賊に…?

街を消した海賊に…?

……冗談じゃない……!!そんな事が出来るかっ!!


お前たちは僕の街を消したんだ!!

僕の唯一の居場所だったのに!!』



あの時と同じ言葉を発したチャンミン。



壺を抱きしめるチャンミンの手がキリキリと音を出しそうな程、
小さく震えていた。



『…チャンミン。

俺がお前の居場所を作ってやる。

俺がお前の居場所を…守ってやる……』















あとがき。

何だかんだ言って、
昨日の息子の怪我記事から書き上げましたww



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