上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

- comments

非公開コメント

第63回ゆのみん企画【海賊】 海賊に恋をして 8

『行かないで…ください……』

チャンミンはユノ船長の背中にしがみ付く。

なぜそうしたのかは分からない。

ただ言えるのは、

ユノ船長の背中の大きな傷。

それを見てしまったチャンミンは、
頭で考えるより先にその背中に手を伸ばしてしまった。


『チャンミン…離せ。』

『いや……行かないでください…僕を…一人にしないで……』


自分が発してる言葉の意味さえ分からないチャンミン。


『チャンミン…』

『や………』

『チャンミン!!』


しっかりしがみ付いていたチャンミンの腕を振り解き、
船長は一歩前へ進み出る。


そして、
チャンミンの手によって肌けてしまったマントをもう一度羽織直しながら、



『チャンミン……やはりお前をこの船に乗せるべきではなかった。』




そう言ってその足を進める。




離れていく背中。

まだガンガンと響く痛みの中で、
チャンミンは振り解かれた腕の行き場に戸惑いながらも、
その背中に向かって叫んだ。


『っつ!!どうして?!何で今更そんな事を言うんだ!
船長が僕を勝手にこの船に乗せて、
……お前の居場所を守ってやるとか、
涙は見たくないとか、
散々僕の事…言ってたくせに!!
なんで……なんで今更そんな事言うんだよ!!』

船をおりたい。
ここから出たい。



その気持ちに嘘は無かった。

あんな怖い思いもして、
誰も味方のなかったこの船の上で、

だた暗い食料庫の中で過ごす日々は苦痛でしかなかった。


でも、
この船から降りたって、
今の僕に居場所なんてない。

父も母も失い、
唯一の居場所だった街も海賊に焼き尽くされた。

屋台も焼かれ、
殺されかけて。


それでも僕を守ってくれた唯一の人……

言葉も少なくて、
会える事も許されないこの船長こそが、

自分の味方だと思っていた。

心の底でそう思っていた自分に気が付く。





海賊船に乗った以上、
この先の運命などほとんど捨てている。


でも……、
でも………。



船を降りろ……




その一言が、
何故が苦しかった。


まるで捨てられるようで……怖かったんだ。



行き場のない自分。



たった一人……たった一人だった僕を守ってくれる人だと思っていたのに…………


チャンミンは力なくベットから起き上がり、
ふら付く身体のまま部屋のドアまで歩き出す。

結局僕は………一人なんだ。


船に居ても、
船から降りても………。


『チャンミン………』


ドアノブに手を掛けようとした瞬間、
囁くように呟いた船長の声が届いた。


しかし、
チャンミンはその足を止めない。


ここにいちゃいけない…

せめて船が港に着くまでは、
いつものあの場所に。

暗くて狭くて…光の届かない食料庫に……。


『チャンミン……』


『…………』


『チャンミン!!』


その声と共に、
チャンミンの身体が包まれた。


後ろからぎゅっとしがみ付くように…ユノ船長の両腕がチャンミンの身体を包んだのだ。


『チャンミン…』

『離してください。僕にはもう用などないでしょう。
助けて頂いて…ありがとうございました……
戻ります。
もう…いいですから……
僕など…最初から役にも立たない人間ですから…』

『っつ…!違う!!』

『離してください…もう……優しくしないでください……』


ついに零れる涙。

『離して……離して………もう………もう………』

振り解こうとした瞬間、


『チャンミン……お前は俺の事……覚えてないのか……?』


『えっ……?』

後ろから包み込まれながら、
耳元に響いた声………。



『俺の事など……もう……忘れてしまったのか………?』




第62回 ゆのみん企画『海賊』に参加のブロガー様はこちらから




ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。