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第63回ゆのみん企画【海賊】 海賊に恋をして 10



暗い暗い洞窟の中。

僅かに感じる火の灯り……

自分の身体を包み込むその大きな身体に、
チャンミンはゆっくりと覚醒していく。

『ぼく……』

全く記憶がない。

どうしてこんなに暗い場所にいるのか、

どうして僕はこの人といるのか……


ゆっくりと覚醒して行く中で、
チャンミンは足に違和感を感じる。

ドクドク波打つように、
膝が痛い。

その痛さと、
この暗い場所に幼いチャンミンは突然声を出して泣いた。



『かぁ…さんは……どこ……?
とぉ……さんは……?
いたい……足がいたいよぉ……』



『泣くな…チビ………』

そう言いながら、
自分の頬を包み込む大きな手……

暗くてよく顔は見えない。


『大丈夫だ、チビ…
大丈夫……』

痛む膝にそっと添えられる手。

『ぼく……かえりたい……おうち、…かえりたい……うぅ…うっ……』

泣き続ける僕の身体を一層包み込むその人は、
幼い自分をただただ包んでくれた。

痛む膝にあてられた手。


腹が痛い時にも、
母さんがこうして手を添えてくれた。

そうすると何故か、
痛みは和らぎ安心していた事を思いだす。



昼間はあんなに暖かかったのに、
光の届かない場所はこんなにも寒い。

加えて痛む膝。

父も母も居ないチャンミンは、
言い知れぬ不安にいつの間にか泣き疲れて寝てしまった。




次に目を醒ました時には、
自分には大きなマントが掛けられていて、
弱かったはずの火の灯りは、
さっきよりも大きくなっていた。

その温かな熱が何よりも安心した。

まだ理解しきれていない心の中でも、
火って……本当に安心できて。



確かに居たあの人は……どこ……?


チャンミンはその身を起こして周りを見渡したが、
そこには誰もいなかった。



『ねぇ……』


小さな声を出したチャンミン。

その声はただただ洞窟内に反射するばかりで、
なんの反応もない。

『ねぇ……ねぇ……』

聞こえるのは、天井から落ちてくる雫の音だけ。



『ねぇ……だれか!


あっ!!』



あまりの恐怖感に、
チャンミンは立ちあがろうとしたが、脚の痛みに立ち上がる事ができない。

さっきは分からなかったけど、
蔓に引っ掛かって転んだ時に怪我をしたのだろう。

チャンミンの足には流血の痕。

けれどその部分には絹の布がびりびりに裂かれたものがしっかりと巻いてある。

誰かが…ぼくを……?


自分に掛けられていたマント。

そしてこの火………


自分は確かにこの場所に一人ではない……

それでも幼いチャンミンはこの場所に一人でいるのが怖くて、
なんとか身体を動かして外へと出ようとした。


でも………歩く事も出来なかった。


這うしか出来ないまま、
チャンミンは精一杯の声をあげる。

『ねぇ……ねぇってば!!』


チャンミンは腹の底から叫んだ。


その時だった。


動こうとなんとか這っていたチャンミンの上から降ってくる声。

気配など感じなかったのに、
いつのまにかその人はそこに立っていて、
小さなチャンミンの身体を軽々と抱き上げる。


『チビ、まだ動くんじゃねぇ』

そう言って、
その人は地面に胡坐をかいて座り、
その膝の上にチャンミンを座らせた。



『……チビ、起きたか?』

さっきよりの強い火の灯りに、
今度ははっきりとその顔が見えた。



あっ………この人………


この時の事を想い出したチャンミンは、

今、この海賊船の船長室で抱きしめられている船長の顔を思い出す。



『……あの時の……あの時の人が……あなたなの………?』


『チャンミン…膝はまだ痛むか……?』


そう言って僕の頬を撫でるその手に、
僕は完全に思い出した。




『あの時…僕を助けてくれたのは………あなただったの………?』


『あぁ…そうだ………

いや……違うな……助けてもらったのは俺の方だよ、チャンミン………』








ユノの膝に乗せられたチャンミンは、

『ぼく…どうしてここに…?』

『怪我をして倒れているお前を見付けた。
どうしてこんなところに子供が居るのか分からなかったが、
他に人間はいなかった。
俺は敵に追われていたからな、
一緒にここにお前を連れて来たんだ。』


『とおさんは…?かあさんは……?』

『分からない。けれど、
もう少ししたらお前を……家に……返して…やる……』


突然歪んだその人の顔。

幼いながらに不安になる。

『どうしたの?お兄ちゃんも…どこかいたいの?』


『だい…じょうぶだ………気にするな………』


もう一度チャンミンの身体を抱き直そうとした瞬間、

ユノは大きくバランスを崩す。

『っつ……』

『おにいちゃん…?ねぇ…おにいちゃん?』

よく見ると、
ユノの首元から、
自分の膝に巻かれている布と同じものが乱雑に巻かれている様に見える。

そこには……血………


『おにいちゃん!血!!』

『こんなの…かすり傷だ……』


そんな風には見えない。

さっきから肩で息をしてるの……分かってるんだから。


そう言った瞬間、

ユノは壁面に背を付け目を閉じた。


『少し眠れば…楽になる……』


そう言いながらチャンミンをしっかりと抱いたまま、
ユノは大きく息を吐いた。


幼いながらもチャンミンは、
この人を助けないと……そう思った。


『おにいちゃん、待ってて。』

『チビ、どこへ行く。その足じゃ…
それにまだ…この外には出るな。
敵が…まだ…いるからな………うっ……』


ユノの手がゆっくりと地につく。

まるで力を使い果たしたかのように、
ぐったりと。


そこに流れる赤い血………

チャンミンはその血を見て、
歯を食いしばった。


『おにいちゃん!!ぼくがたすけるから。
ぼくがおにいちゃんを守るから!!』





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