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海賊に恋をして 13

『お兄ちゃん…死なないで…
死んじゃ……や……』


小さく柔らかな手が触れた気がした。


遠のく意識の中で、

なぜ自分はあのチビを思い出しているのか……

俺は……なにも残せないまま…本当に死ぬのか……


『チャンミン………』


最後に…お前みたいな純粋なやつに出会えて…良かったよ………










『ユノお兄ちゃん………


ユノお兄ちゃん…………』


『こら…チャンミン。まだ寝かせてあげなさい。

兵隊さんはまだ夢の中にいらっしゃるのよ…』

『母さん…ユノお兄ちゃん……ほんとうに起きる……?

ほんとうに死んだりしない?』

『大丈夫よ…チャンミン。大丈夫だからもう寝なさい。』

『やだっ!ユノお兄ちゃんのそばにいる!
お兄ちゃんを助けるってやくそくしたもん!
目をあけるまで、ぜったいにここから離れないもん!』

チャンミンは横たわるユノの手を握る。

『分かったわ。じゃぁ…兵隊さんが起きたら母さんに教えるのよ、
チャンミン。』

『うん!ぼくがずっとずっとユノお兄ちゃんについてるもん!』


そんな声に導かれながら、
ユノは目を醒ました。

瞼に感じた淡い光………

ここは…いったい……


天井を見上げると、
どこかの家のようだ。

天井だけで分かる決して裕福ではないその家の中。

しかし、
先ほどの洞窟とは違う空気…。

どう説明していいのか分からないが…ここは…なんだか…温かい……。



そして、

自分の手に触れるそれもまた……

胸の奥がズキンと痛むほどに……温かかった………。




『ユノ…お兄ちゃん……起きて……おねがい……起きて……』



消えそうな程の小さな声に、
身体中に感じる重たい意識の中で視線を向けた。



そこには自分の手に重なる小さな手…


そして、


その先に閉じた目と…長い睫毛が見える。




チャンミン………


その顔を見て、
深いため息をついた。


これは夢か………?

いや……この手に感じる温もりは…確かに…あたたかい……


あぁ……自分は……生きてる。


生きているんだ……




安堵感に包まれながら、
もう一度チャンミンの寝顔を見る。




『ぼくがお兄ちゃんを助けるからね!
絶対に助けるからね!!』



そう叫んだチャンミン。


チャンミン…本当にお前が助けてくれたのか……?



その想いを込めて、
その小さな手をぎゅっと握り返した。


『ん……ユノ………おにいちゃん…?』


『チャン…ミン……』


『ユノお兄ちゃん!!
かあさん!!
かあさん!!!
ユノお兄ちゃんが……
ユノお兄ちゃんがっ!!』

『チャンミン………』

『ユノっ…おにいちゃぁん!!』

チャンミンは再び大粒の涙を流して、
ユノの首元に飛びついた。











あの時、

チャンミンは懸命に洞窟の外に出た。


周りはまだ薄暗く、
陽も上がっていなかった。

葉についた朝露がキラキラする中、
その葉についた露を飲みながら懸命に歩く。


ユノだけを助けたくて、
痛む自分の足も、
ユノが巻いてくれた布から血が滴り落ちても、
チャンミンは怖がることもせず、
ただ懸命に……



そして父と母に再会する。

チャンミンの怪我と、
その頬についている血を見た両親はひどく驚いたが、

必死にユノの事を伝えようとするチャンミンに促され、
ユノを発見した。



そして、
なんとか村までユノを連れて来たのだ。



ユノは背中を大きく斬られていた。


村にいる医者、
そしてチャンミンの両親の懸命の手当てを受け、
ユノはなんとかその命だけは取り留める事が出来たのだ。




『兵隊さん、あなた…東軍の…方ですよね……?』

『……はい。』

『先ほど…西軍の……青い旗を持った軍がこの村に来ました。
なんでも…赤い東軍の頭を追っているとか…。
それはもしかして…あなたの事ですか…?』

『………すみません…すぐにこの村から出ていきます。
私は元来、ここに居るべき人間ではない。
迷惑がかからないうちに…ここを。』

そう言って身体を起こそうとしたユノに激痛が走る。


『ダメです!!
そんな事はどうでもよいのです。
あなたは息子を……チャンミンを救って下さった方…。
東であろうが、
西であろうが、
あなたはこの幼いチャンミンを救って下さった人……。

私たちはあなたの怪我が治るまで、
ここでお守りします。
ご安心を。』

チャンミンの母はそう言って部屋を出た。


『うっ……うっ………』


『チャンミン………』


母親が出て行っても、
チャンミンはユノの傍から離れなかった。


ユノの手をただ握りしめ、
大粒の涙を流す。

『チャンミン…もう泣くな…。
俺は大丈夫だ……
お前が助けてくれた。
だから俺はこうしてまた息をする事が出来る……

本当に…ありがとな…チャンミン……』


『ぼくっ……ぼく……こわかった………
こわかったぁ……うっ…うっ……』

ユノの手を掴むチャンミンの手が震えている。


こんな小さな…歳は……わずか7つ程…か……


そんな小さなチャンミンが、
怪我をし、
真っ暗な洞窟から一人で這い出て、
離れ離れになった両親を探すなど、
どんなに怖かっただろうか……

そして、

その背景には…傷付いた人……

今にも消えそうな命を、
この小さな背中に背負い走ったチャンミン……

その勇気。

その心………

それを思うだけで、
ユノは胸が熱くなる。


『チャンミン…よく頑張ってくれたな……
偉いぞ……
もう…大丈夫だ………

こんな傷…すぐに治るさ……

大丈夫…

みんな…チャンミンのおかげだよ……』


そう言いながら、
ユノはその小さな身体を引き寄せる。


そして、
その頭を包み込み、


『チャンミンは俺の命の恩人……

今度は俺がお前を守るよ………』

『ユノっ……おにいちゃん………』

その日の夜、

ユノはチャンミンを抱きしめて寝た。

チャンミンが自分の部屋に戻らないと言ったのもそうだが、

ユノ自身がチャンミンと一緒に居たかった。


この小さな身体…
その温もり…
そして、
その大きな瞳で見上げてくれるチャンミンが全てを癒してくれた。

何よりもその温もりが…この時のユノを…救ってくれたのだ………










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