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海賊に恋をして 15


『あの時の………
あの時の人が……あなた………?』

船長室の中、
今、後ろから抱きしめられている人が…ユノお兄ちゃん………


チャンミンははっきりと思い出す…

思い出すと言うよりは……記憶が…戻ったと言うべきか……





あの日、
チャンミンが目を醒ますと、
隣に居るはずのユノが居なかった。

まだ自分では動けないはず…。
それなのに…ユノはどこへ……


『母さん!!母さん!!
ユノお兄ちゃんは?!
ねぇ!!
ユノお兄ちゃんが居ないよ!!』


部屋に入って来た母は、
そこに残る僅かな部屋の変化に気が付く。
床に微かに残る数人の足跡。

そして、
部屋の片隅に落ちていた東軍の紋章の入った絹のハンカチ………

ユノはここに連れて来た時には無かったはずのそのハンカチに、
チャンミンの母は咄嗟に気が付く……。


『チャンミン……ユノ様は…助けが来てっくださった様ね……
国に……仲間の皆様がお迎えに来て下さった様ね……』


『……そんなっ!!うそだ!!
ユノお兄ちゃんが僕に何も言わないまま行っちゃうなんて……
そんなのうそだ!!』

『チャンミン…これは仕方のない事……
早かれ遅かれ…ユノ様は国に帰らなければならなかったのよ…』

『やだ……!!
やだ!!
そんなのやだっ!!』

チャンミンの両目からはらはらと溢れる涙。

『やだ…元気になったら一緒に木苺…取りに行くって約束したもん!!
ユノお兄ちゃんが剣の使い方をおしえてくれるって言ったもん!!
チャンミンも強くなって父さんと母さんをたすけなきゃだめだって!!
だからいなくなるなんてウソだ!!
うそだ!!』

『…チャンミン…』

『うわぁ…っ……ウソだ……
ひどいよ!!
ユノお兄ちゃん!!
ユノお兄ちゃん!!!』

チャンミンは家の中を探し回る。

ユノが元気になってどこかに隠れているんじゃないかと、
家中を探した。


母が止めるのも聞かず、
父の言葉も聞き入れる事無く、
チャンミンは大きな瞳から止まる事無い涙を流して、
必死になってユノの姿を探す。


しかし、
ユノの姿はどこにも無かった。


残されたのは、
東軍の紋章が入ったハンカチ………
そこから僅かに香るユノの匂い………。



それだけを残して、
ユノはチャンミンの前から消えてしまった……。




泣き叫ぶチャンミン………

その声は村中に響き渡る。

いつまでもいつまでもその声はチャンミンの家から響いた。


村中の誰もがこの小さな叫びに、
心を痛めたのであった。





その日の夕方、
泣き疲れて眠るチャンミンの家に、
西軍の兵士がやって来た。


『尋ねる。ここに赤の東軍の者はいるか?』

ずかずかと入り込んできた数人の兵士に、
チャンミンは小さな身体を更に小さくして父の後ろに隠れた。

『この村に兵士などおらぬ。
ここは戦とは関係のない小さな村。
申し訳ないが今すぐに出て行っていただきたい。』

『ここに東軍の長がいる事は知っている。
申し訳ないが探させてもらう。』

そう言って家の中を乱雑に調べ上げる兵。

すでにこの場所には居ないユノの痕跡を探すように、
兵はあらゆる物を投げ捨てる様に探す。

その様子を黙って見ていたチャンミンは、
幼心に気が付く……

ユノがこの場所から消えなければならなかった理由が…。


兵の者から時折聞こえる声。

『どこへ行った。
あの傷ではそんなには遠くには行けないはず。
いま首を取らなければ意味がないぞ!』

『探せ探せ!!
あと少しで東軍を!!』

その声にチャンミンは胸に閉まっていたあのハンカチに手をあてる。

これが見つかれば…

見付かる訳には絶対に行かない。

『なぁ坊主。ここに赤い服を着た人は来なかったか…?』

両親の隙をついて西軍に問われるチャンミン。


チャンミンは首を横に振る。



『嘘じゃないだろうな…?』



チャンミンはますます首を横に振り、
胸に当てていた手をぎゅっと握った。


『ん?坊主…そこに隠しているのはなんだ?』


『や………なんでもない……!!』

『坊主…それ…見せて見ろ。』

『やだっ!!絶対にやだ!!』

逃げようとするチャンミンを背後から羽交い締めにする兵士。

『やだ……!!やっ!!』

小さな身体は簡単に捕まってしまう。

そして、
そのハンカチを奪われようとした瞬間、

『やめて!!これだけは……これだけは僕から奪わないで!!』

『これは…隊長!!!東軍の紋章です!!』

『なに?!』

『やだーー!!これだけはっ!!』

必死になって掴んだ兵士の腕。

しかしチャンミンはあっさりとその身体を引き離される。

『やはりここに居たか…
しかしすでにこの村には居ないようだ。

探せーーーー!!
今度こそ絶対に討て!!!』


『止めて……止めてーーーー!!』


チャンミンは兵士の手からそのハンカチを奪い、
必死になって叫ぶ。

『お前たちに何がわかるんだよ!!
お前たちのせいで………
お前たちのせいで!!!』

チャンミンはハンカチを握りしめて、
兵士へと体当たりした。

その刹那…、

『うるさいガキめ!!
お前などに用はない!!!』


『あっ…!!』


その小さな身体が壁にたたきつけられ、
チャンミンは頭を強く打って気を失った。

『チャンミン!!
小さな子供にまで手をだすなんて!!』


母がチャンミンに駆け寄った。


『急げ!!必ずや捕まえろ!!』

兵は家中を荒らすだけ荒らして、
去っていった。


この時に頭を打ち付けたチャンミンは2日間眠り続けた。


そして次に目を醒ました時には、
なぜこんなハンカチを握りしめているのか………分からなかったんだ。


ユノとの記憶を失ったチャンミン。


ユノが去った事は幼いチャンミンにとって計り知れない心の傷……。

頭を壁に打ち付けた事と、
ユノを失ったチャンミンの心が無意識に悲鳴を上げ、
あまりの苦しさにその記憶を失ってしまったチャンミン。


『このハンカチだけは失くさないで…』

そう言っていた母の言葉の通りに、
この紋章が何なのかもわからないまま、
チャンミンは成長していった。




ユノとの記憶だけを失い、今日までずっと………。



しかし…思い出した……

この声…

そして、

この…香り………



『もしかして………
この紋章は……………』


そう言って、
チャンミンはいつも肌身離さず持っている胸元の袋の中から、
あのハンカチを取り出した……。


母の言いつけ通りではない。

なぜかこれだけは…手離せなかった。

ここから香って居た大好きな匂いが消えても、
これだけは絶対に…。





『俺が…お前の家に…落としてきたんだ。
わざとな………』


『……そんな………

思い出した………

思い出したよ……

ユノ……

ユノ………

どうしても助けたかったユノ………が……あなただったの……?』




『ようやく見付けたよ……チャンミン…………』




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