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海賊に恋をして 17


『ユノ…さん……?』

『チャンミン、この船から下りるんだ……』

慌ただしく着港の準備を進める水平達を見下ろしながら、
マントのフードを被ったまま、振り返る事なくチャンミンに告げるユノ。


今朝……誰も立ち入る事を許されない船長室で目覚めたチャンミン……

再会を喜び、
そして気持ちが分かり合えたと思っていたユノから突然告げられる別れ………

『ユノ…さん…?どうして……』

『チャンミン、会えて…良かったよ……。
礼は言った…。
お前はここに居るべき人間ではない…。

もう……もう2度と…この船には戻るんじゃない。』


『な…なんでそんな事……
だって僕たちは……』

『チャンミン!!これはキャプテンの命令。
キャプテンの命令に従わぬものは、
速攻斬る!!』



『……ユノさん………』

『いいから行け!

お前のバックに礼を入れて置いた…
それだけを持って…この船を降りろ。』





どうして……?

僕達……まだ……なにも………。

ほんの少しだけ…分かり合えたのに……

記憶を失っていたとは言え…、
あんなに会いたかったユノさんに…ようやく…ようやく会えたと言うのに………


たった一晩。
たった一晩、
過去の温もりの中で幸せだったと言うのに……。

ずっと一人ぼっちだった僕が、
ようやく見付けた大切な人…だったのに……。




『ユノさん!!』


一度も振り返らないままのユノ…。


『ユノさん!!』

チャンミンはその後姿を追い、
足を進める。

決して振り返らないユノ。


『ユノさん!!』


『チャンミン!!
馴れ馴れしく呼ぶな。
俺はこの船のキャプテンだ!!

俺の命令は絶対。

おい!ミノ、チャンミンをこの船から早く下ろせ!!』



いつの間にか自分の隣に居たミノ。


そのミノに、
チャンミンは羽交い締めしされるように引きずられていく。


『そんなっ!!

ユノさん!!…やっ……離して!!

ユノさん!!』


『キャプテンに向かってなんていう口の聞き方!!!』


ミノは腰に携えた剣を抜く。

そして、
それをチャンミンの目の前でちらつかせ、

『命令に背くやつは直ちに斬れとの命令。
お前も容赦はしない。』


『くっ………』


どんどんと引き離される身体。


ミノとの体格の差は歴然。

まるで子供が引きずられるようにチャンミンは船から下ろされる。


なにも言えないまま、

その顔をもう一度見る事もなく、

チャンミンはユノの船から下ろされた。


自分の居場所を作ってやるから…

泣くな…チャンミン……

ようやく…見付けたよ……


そう言ってくれたのは……嘘だったの……?

昨日…あなたに包まれたあの腕の中は…全部…夢…だったの………?


下ろされた船の一番高い所に居るユノの後姿を見て、
チャンミンは再びその大きな瞳に涙を浮かべる…。


『お前など、始めからキャプテンに近寄る事など許されないのだ。
お前とキャプテンとでは身分が違い過ぎる。

さぁ、これを持って早く消えろ。

これは命令。

この場所に戻ってくる事など決して許されない。』


そう言って、
ミノはチャンミンの身体を地面へと押し出す。

突然の事に足がもつれ、
地面にたたきつけられる。

そして、
バックを身体に投げつけられた。


『さぁ!!行け!!』






そう言ってミノは船へと戻って行った。


身分が…違う………

そんな事…分かってるさ……

でも…勝手に船に乗せて、
勝手に…僕の記憶を戻したくせに…戻った途端に…どうして……。


こんな知らない街に放り出され、
これから僕にどうしろと……。


ねぇ…ユノさん……どうして……




海賊船に乗せられた事を恨んだ日もあった。

ただ…街の人を幸せにできる料理人になりたかっただけなのに。

ただ……普通に……生きて行けたら…それでよかった。

薄暗い食料庫の中で、
何度も何度も逃げたいと思った。

でも…今は違う。

ようやく会えたんだ…
幼い頃に失った大切な想い出に…ようやく会えたと言うのに………


船に戻りたくても、
船にかかる橋の前には…剣を持った兵…。

僕はまた……一人きり………




とぼとぼと見知らぬ街を歩く。

ここはいったい……

こんな場所に一人で下ろされて…僕は一体どうすればいいのだ。

何もない。

僕には何一つないのに…。


大きな木の下を見付け、
そこに腰を下ろした。


見上げれば緑の葉がゆらゆらと揺れ、
そのから零れる陽の光が…眩しい。
その光を手で遮り、
風を感じた。


あぁ…そう言えば昔もこんな事があった。

ユノお兄ちゃんの為に木苺を採ったあの日、
ユノお兄ちゃんには大きくて形の綺麗な木苺だけを食べさせようと、
大きな木の下で、採って来た木苺を分けていたあの時…。

背中の大きな傷。

そこに触れるのも本当は怖かった。

それでも少しずつその傷も癒え、
ユノお兄ちゃんがニコニコしながら食べてくれる木苺を時間が経つのも忘れて採ってたっけ…。


あの頃は怖いものなんかんか無くて、
あのユノお兄ちゃんさえいてくれたら、
僕は世界一強いんじゃないかって思うくらいで…。


…どうしてそんな大切な記憶を失っていたんだろう……。


それを思い出した。


思い出したと言うのに、

その心を通じ合わせたのは…たったの一晩。


どこかで僕は思っていたんだ。


これで一人じゃなくなるって。

もっとたくさん話したい事があった。

もっと…伝えたい事はたくさんあったはずなのに……。



それが今はこのざま……。




『ふっ……』


自分に笑える。

自分に……泣けてくる。


あれはほんの僅かな時間だったのだろうか…


最初は憎んでいた海賊船。


そしてその船長…。


それがなんだよ……

どうして僕はこんなにも、




ユノさんに…会いたい……



もう一度だけ、


会いたい………



『くっ……ふっ………』


なんでで僕は今、

見知らぬ土地の木の下で…一人で泣いているんだろう……

どうして僕は今……

こんなにも心が痛いんだろう………。



陽が落ちる頃、

もう一度港に戻る。


もしかしたら……そんな気持ちが大きかったが、
そこにユノさんの船はあれど、
明かりは疎ら……。


それでも橋には兵士が何にも居て監視を続けている。


僕はとぼとぼと夜の街へと足を進めた。


これからいったい……


その時だった。


『お兄ちゃん、綺麗な顔をしてるね…
俺の店で働かないかい…?』

『えっ…?』

『いや…小さな飲み屋なんだが、
ちょうど人も足りない。
その様子じゃぁ…ここには初めてきたんだろ?』

『…いいんですか…?』

『良いに決まってる。さぁ、こっちへ。』




誰も頼る事の出来ない僕は、
この街に来て初めて会話したこの人に…ついて行ってしまったんだ……。







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