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海賊に恋をして 19

次に目を醒ました時には……そこは真っ暗な暗闇だった……



なにか柔らかいものに寝かせられている感覚はあるものの、
視界は…ほとんどない。

そんな中で、
自分の半身が…とても温かい……。

まるで何かに包まれる様にそこはあまりにも心地良かった…。




『んん……』

何度瞬きをしても、
その視界は開けない。


でも……、


『チャンミン…気が付いたか…?』

その声だけははっきりと聞こえた。




『ユノ…さん……?

ユノさん…だよね………』


まだ覚醒しきれない中でもチャンミンはその人の名を呼ぶ。


返事はなかったが、
確かにそれはユノさんだと……。


この匂い。

この腕の中…。

もう2度と忘れないあの温もり。


もう2度と……忘れたくない温もり……。



返事がないまま、
更に抱き込まれた身体。


『ここは……?』

『チャンミン…すまなかった…。
お前をひとり…放り投げてしまって。
この街は安全だと聞いていたのに…まさかこんな事に…。』

『………』

『でも安心しろ。
明日になればお前を安心して託せる人がここに来る。
その人はこの街の料理人。
そこでお前も一緒に働けばいい。
住む所もすでに手配してある。
だからもう…安心しろ。チャンミン。』

『……そんな……』

『お前は料理人になりたいんだろ…?
昔…お前は言っていたな…。
父さんに負けない料理人になりたいと……。
明日からお前の世話をしてくれる人は腕のいい料理人で、
人もいい。

明日…必ず迎えに来ると約束してくれた。

だからそれまではここに隠れているんだ。

いいな…。』



そう言って、
温かった半身がすっと…離れていく。


『まっ……待って!!』

咄嗟にその腕を掴んだ。

しかし、
チャンミンの腕をやさしく解き、

『チャンミン…お前には幸せになってほしいんだ。
ただ…それだけだ…。』


全く見えない視界の中でも、
ユノさんが僕を見下ろしているのが分かる……


その大きな手で、
僕の頭をそっと撫でながら、

『チャンミン……会えてよかった……

……幸せになれ……』


そう言い残し、

その熱が遠ざかって行く。


『まっ……待って…!!待ってよ!!ユノさん……』


身体を起こそうにも…まだ朦朧とする意識の中で、
上手く立つことが出来ない。


『待ってっ!!』


そう叫んだ瞬間、
この部屋のドアが開かれた。


そこから漏れる淡い光…。

その瞬間に見えたのは…マントを被ったユノの後姿……。

ちらりと見えた横顔は…なぜか寂しく微笑んでいる。

しかし、
チャンミンの叫びに決して振り返る事なく、
そのドアがゆっくりと閉じられていく……。



映し出された影……
ゆらゆらと揺れるマントに包まれたその後姿…。

どんどん消えていくその後姿に、
……本当に……本当にこれが最後の別れになる気がした………。



『やだ………やだっ!!行かないでユノさんっ!!』



床を這う様にその消えたドアまで重い体を進めるチャンミン。





『チャンミン……これで…さよならだ……

お前は…生きろ……

戦いとは無縁の世界で………』



ガチャリと鍵が締まる音……。



や……だ………

やだ………

そんなの……やだ………


行かないで………

僕を……置いて…いかないで……



ドアまでたどり着き、
残る全ての力でそのドアを叩く。



『ユノさんっ!!ユノさん!!』

遠のく足音………

それが……まるで僕の心に剣が刺さる様に、
じわりじわりと突き刺さり、
ドアを叩く手が切れるのを感じてもチャンミンは無我夢中でユノの名を叫び続ける。


『ユノさん!!
ユノさんは僕にっ…約束した。
お前の居場所を作ってやるって……。
僕に泣くなって言った!!
それなのに……それなのに………』



もう…足音さえ聞こえない。

それでもチャンミンはこの暗闇の中、

たった一晩だけ見たあの優しいユノの横顔を暗闇に映し出し、

腹の底から叫んだのだ。


『ユノさんっ……
僕に強くなれって言った……!!
剣術も教えるって言った……

それなのに……

ようやく会えたのに、
どうしてまた…すぐに別れなきゃいけないんだよっ!!

守るって言った……

僕もユノさんを守るって約束したよ!!

それすら叶えてないのに、
ユノさんはまた僕の前から勝手に居なくなるの?!


やだよ……そんなのやだよ!!

何も…何も言えないまま、また僕を一人ぼっちにするの?!


ねぇ!!ユノさんっ!!』




叩き続けるドアの音だけがそこに響く。

ようやく思い出した幼い頃の大切な想い出……

その中心に居るのは…傷付きながらも自分を守ってくれたあの大きな手……。


それを瞼に浮かべながら、
チャンミンは叫び続けた。


叫ぶたびに飛び散る涙……。


決して返事のないその向こうに、
チャンミンは必死になって自分の思いをぶつけた。



最後に…後悔だけはしないよう…過去に伝えきれなかった想いを全部ぶつける様に……。




ついにドアの下に伏せるチャンミン……



下から漏れる僅かな光に映し出された手は…真っ赤に染まっていた。




『ユノさんっ………!!

お願いだから……僕を……一人にしないで………

ユノさんまで居なくなったら……僕は本当に…一人っ……なんだよ……


ひとりぼっちで……幸せになるなんてっ…どうすればいいんだよ………


こんな事なら…思い出さなきゃ良かった……

ユノさんの事なんか……思い出さなきゃ……良かった………


酷いよ……ユノさん………

酷いよっ!!』



床に叩きつけた拳……。

そこに重なる淡い光が一瞬だけ遮られた。



…えっ……


『ユノさんっ?!
ユノさんでしょ…?』

チャンミンははっとして再びドアに両手をかける。

最後の望みを託すように、

『ユノさん……僕をもう一度あの船に………
もう…僕には最初から居場所なんて無かったんだ……
ならば……またユノさんと一緒に……居たい……
ユノさんの邪魔にならないようにするから…
またあの船に……』



『チャンミン……』

『ユノさんっ…おねがい……おねがいだから…一緒に………』

『それは出来ない。』


『どうしてっ!!』

『チャンミン…よく聞くんだ……。
俺は……今も昔も……戦の中で生きている。
それは…生まれてからの運命。
常に命を狙われ、
時に大切な物さえも奪われる。
何度も何度もこの運命を呪い、
自らたくさんの人を…斬ってきた……

それが…俺の生きる道。

それが……俺の運命。

明日にでも死ぬかもしれないそんな人生に、
お前を巻き込みたくはない。

あの船に乗るという事は、
明日死んでも…おかしくないという事……。

最初から船に乗せるべきではなかった…。


お前には生きて欲しい。

俺の分も…ごく普通の人生を…
あたり前の幸せの中で生きていて欲しいんだ。

だからここで…サヨナラだ。』




その言葉と共に、

ドアの僅かな隙間から何かが差し入れられる。

『チャンミン…これを……これが俺からの友情の証しだ……』



僅かな光の中で見たのは、
見覚えがあるピアス…



『これって……』



それはユノの両耳についていたダイヤのピアス。

その片方のピアス……。


いつか誰かに聞いた事があった。

ピアスは位を示すという事を。

船長だけが付ける事を許されるそのダイヤのピアス。


そして、



『船長からそのピアスを与えられるものは、
船長が一番大切にする人だけだ。
それを付けている人間には誰も逆らえない。
そのピアスこそ、
船長からの最高の褒美であり、
船長の最愛の人の証しなのだ。』



と………。




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