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海賊に恋をして 20

ドアの下……

そこから差し入れられたダイヤのピアス……。

『ユノ…さん……?
これって……』


そのダイヤにゆっくりと手を伸ばす……。


『いつか…いつかお前に再会できた時に渡そうと思っていた……
これで……本当のサヨナラだ。
チャンミン……


幸せになれ……』


その言葉と共に、
ユノは行ってしまった。


今度こそ…本当に………。

チャンミンの手の平に残る片方のピアスだけを残して……。

チャンミンは、
もはやなんの音もしなくなった暗い部屋の中、
そのピアスをぎゅっと握りしめる…。




ユノさん……

ひどいよ………

勝手に僕を船に乗せて…、
勝手に…僕の心に入り込んできて……
お前の居場所を作ってやるって言ったり、
泣くなって言ったり…

一人ぼっちの僕の心を乱しておきながら、
挙句の果てには……思い出した過去の出会い…。

決して忘れてはいけなかったあの日の記憶を思い出させておいて、

最後には……サヨナラなんて……


こんな……こんな大切な物だけを残して…ユノさんは行ってしまった……。


酷い……

酷いよ………

結局僕は……また一人……



大切な物はいつも、
この両手からすり抜けてしまう……

手にした瞬間…砂の様に跡形もなく……



『くっ………

わぁ……

わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


チャンミンの悲しい叫びだけが、

その暗闇の中に響き渡った……。






その頃………


『船長……本当にこれで良かったのですか……?』

船首に一人で佇んでいるユノの背中に、
ミノがそっと話しかける。


『あぁ…これでいい。
これでいいんだ……』


『しかしあの者は……』


『……ミノ、いいのだ。
もう……なにも言うでない。』


そう言ってユノはマントのフードを脱いだ。

風に靡く長い長い黒髪……。

誰よりも大きく長い剣を腰に纏い、
今はただこの風を頬に感じているユノの後姿。


その姿に……なにも言えなくなったミノ……



ミノは知っていた。

船長がずっとずっとチャンミンを探していた事を…。


あの日………チャンミンの家に居たユノを連れ出したのは自分。

死をも予感させたあの大怪我でも、
きっとユノはどこかで生きていると信じ、
部下と共にずっと探していたミノ。

そして、
幼かったチャンミンがユノを掴んで寝ている姿を見たのも、
このミノであった。

初めてこの船にチャンミンを乗せた時に、
ユノがチャンミンを見つめるその優しげな瞳。

寝顔しか見れなかったあの時の幼子が、
このチャンミンだという事に気が付くのに時間はかからなかった。



『船長……
あいつは……チャンミンは幸せになれるでしょうか……?』


『…………』


ユノは黙って空を見上げた。

頭上には満天の星……


いつか聞いた事があった。


この星に願いを掛けると、
その願いは叶うと……


ユノは静かに目を閉じる。

そして両手を胸の前で組み、

静かに願う。


……チャンミンが…幸せでありますように………

この先の未来も……笑って居れますように…………



ミノはその姿を黙って見つめた。


ずっと…ずっとこの人の傍で誰よりもユノを見て来たミノ……


ユノの事を誰よりも知っていて、

誰よりもユノに対して忠誠心の強いミノは、


ユノを慕っていた……


ユノの片腕としてだけでなく、
ユノ自身に…想いを抱きながら生きて来たミノは、

ユノに近づくものをすべて遠ざけ…守って来た。

それはユノの為…、
自分の為に……。

だからこそ…、
最初…チャンミンがこの船に乗った時、

ユノをチャンミンに奪われると思っていた。

それが怖かったミノ……。

決して自分の想いが叶わない事は分かっていた。
ずっとずっと…分かっていた…。


それでもミノは…ユノを……好いていてた…。

ミノは………自分の想いを口にせず、
ずっとずっとユノの傍に居た……

傍に居れるだけで……、
守れるだけで……幸せだった。


そんな時に現れたチャンミン………


怖かった……ユノを……取られてしまいそうで………。





そのチャンミンが船から降りた。

ユノの意志で、
ユノの手で……。

嬉しかったはずなのに、
ユノの…こんな後姿など…自分が望んだ事ではない……。

ユノの左耳についていたピアス…
それが無くなっている事に気が付いたミノ……

いつか…自分に与えてもらえると思っていたあのピアスは…もう…ない……。

誰の手に渡ったのかは……誰よりも自分が知ってる……。


胸が苦しいほどに締め付けられる。


でも…それ以上に、

こんな悲しい顔をしたユノを見たくは無かった………。




『船長……
私が居ます……
あなたの傍には私が………』


『あぁ……』


ユノはそう言って、
再び風にその身を委ねる……


波の音に乗り、
その心の叫びが聞こえてくるほどに悲しげな瞳のまま………。


『船長………幸せは………自分で決める事です。

人から決められるものでもなく、
普通に生きる事だけが……幸せではないと…。


あの者の幸せは…いったい…なんなのでしょうか……

あの者の幸せの先には…なにが一番必要だったのでしょうか…………』


ミノの言葉は、
無情にも夜の海へと消えていった……。


そして、
ミノが甲板から姿を消す瞬間、

『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!』


ユノの悲しい叫びが……聞こえた………。













なにも考えられないまま、
チャンミンは床に伏せっていた……。


声を殺し、
もう……涙も流し尽くした……。


握っているピアスを握りしめる手……。

もう……なにも…考えられない……


朝が来たら…、
この部屋に光が届くころには…自分には何が待っているんだろう……


料理人になれと言ったユノ。

なりたかった料理人への道を作ってくれたユノだったが、
それが本当に自分が望んだ未来だったのか………。


もう……なにも……考えたくない……

願うなら…もう2度と……目を開けたくない………



そう……


もう僕には……なにも……ない。



漆黒の闇……


そこにチャンミンは……たった一人きりだった。





その時…、



『チャンミン……中に居るのか………?』



ドアの外から聞こえた小さな声……


『っ!!だ……れ……?』


ユノの声ではない……。



『チャンミン……お前をここから出してやる…………』





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