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海賊に恋をして 22


夜が明けるころ、
チャンミンは一人港へと向かう。

ミノはあのまま夜の闇へと消えていった。

『チャンミン…お前の覚悟を信じる……
しかし、ユノ様はお前を簡単には受け入れてはくださらないだろう…。

あの人の覚悟……それもまたお前と同じように固い……。

ユノ様は簡単にお前を船には乗せないだろう……

それでもユノ様のお傍に居たいのなら…あとは自分で考えるんだ……』


そう言い残して…………。


あの部屋から出て、
チャンミンは一人で丘に立った。

左耳から流れる血はもう乾いた……。

もう覚悟はできた。

自分はユノの傍で生きていきたい。

ユノに助けられた命。

自らも瀕死の怪我を負い、
それでも自分を助けてくれたユノ。

幼い自分を抱え、
自ら流れる血にも臆することなく助けてくれた……

どんどんと蘇ってくる記憶の中で、

チャンミンはユノの優しい眼差しが胸に広がるのを感じる……


そして再会したあの日……

屋台も焼かれ、
海賊に襲われた。

あの時も………。


自分は一体何度ユノに命を救われたのだろう……

ユノが居なかったら、
今この場所に立つことも無かったのだと思うと、

自分がすべき事がなんなのか考えるまでもない。


僕は……


僕は………


ユノさんの隣で生きていく。

ユノさんの傍で、

この呼吸が止まるその瞬間まで、

ユノさんの隣で生きていたいんだ。



弱い自分。

剣など一度も振り上げた事のない自分。

僅かに残る料理の知識…。

それしか持ち合わせていない自分に一体なにが出来るのか……


それでもいい。

それでもいいんだ。

僕は僕のまま、

ありのままで。

今の自分でユノさんの傍に。

そして、

ユノさんの傍で強くなっていきたいんだ。


それが僕の道。


それが……僕の運命。


白み始めた空に新しい未来が待っている様だ。

それがどんな色に染められようとも……

この空の下、

僕はこれからも生きていく。

ユノさんの隣で…………。








『出航準備は整ったか?』


船長室から甲板を見下ろすユノは、
クルーに向かってそう呟く。

『はっ!!船長、あと1時間で出航できます。』

『……そうか。次の港までひと月…。

怠るな…』


『はっ!!』


ユノは慌ただしく動き回る船員たちを見降ろす。

その瞳は……色を失っている様に見える。

船長の様子がおかしいと思いながらも、
船員たちは次の航海へ向けて声を荒げ動き回る。


コンコン……

部屋のドアがノックされ、
入って来たのはミノ……。


『ユノ様…本当にこれでいいのですか……?』

『ミノ…しつこいぞ。』

『…でも……』

『これでいい。
これでいいのだ。
もう…なにも言うな。』

『しかしあの者はっ!』

『俺の決心は変わらない。
出航準備が出来次第、
夜が明ける前に港を離れる。

もうこの街には…2度と来ないだろう…』


『………それがあなたの……あの者への情……なのですね……』

『……………』

『私が居ます。
どんな時も……
あなたがどんな決断をしようとも……。

今までそうであったように、
これからも………

失礼します………。』


パタンと閉まったドア……。


ユノは大きな息を一つ吐いて、
その目を閉じた………。



準備が整い、
船に掛けられていた板橋が外され、碇が上げられる。


チャンミンは……まだ来ない。


ミノは港を見下ろし、
チャンミンの姿を探した。


しかし、
どこにもチャンミンの姿はない。

……チャンミン……どこへ行ったのだ…………
もう船はでてしまう…。
お前の決意は……結局………


出航の合図が鳴らされる。


………間に合わなかったか………………


そう思った瞬間、



『待って!!』


朝市で賑わう港街から、
船に向かって懸命に走る一人の男……



『待って…下さい!!』


その声は一体どれだけの人に届いているのだろう……。


あれは…チャンミン……




『チャンミンっ!!』



ミノは大声で叫んだ。


しかし、
その声は飛び交う声に負け、
船の者には届いていない。



『待って……待って!!!』


チャンミンは必死になって船に走ってくると言うのに、
それに反して船はゆっくりと向きを変え始める。


『くそっ!!
船を……エンジンを止めろ!!!』


ミノの言葉もまた雑踏の中に消えていく。


ユノ様っ……

ユノ様っ……!!




ミノは急いで船長室へと駆け上がった。


『ユノ様っ!!』


ユノはチャンミンが向かってくる反対側の窓辺に立っていた。

街に背を向ける様に、
ただ静かにそこに佇んでいた。


『ユノっ…様………
チャンミンが……
チャンミンがっ!! 』


その名にユノの身体が小さく跳ねる。

『チャンミンが…船に向かって来ております!!
どうか……どうかあの者の想いも分かってやって下さい…!!』



『ミノ…お前……』


『ユノ様……あの者の幸せは、

あの者が決める事。

ここに残して行く事が本当の幸せでしょうか?!

あなたと離れる事が、
あの者の幸せなのですか?!


あなたは…もう……チャンミンなしでは生きて行けない……

そうでしょう……?

この運命から遠ざける事が幸せとは限らないのです!!

どんな事があっても……

どんな事が待っていようとも……それでも共に生きる道の方があの者にとっての幸せなら、


それを叶えてあげられるのは……


あなただけだっ!!!



『……あいつを死なせたくない……』


ユノは決して振り返らない。

ゆっくりと船が動き出す。


『……ユノ様っ!! 


ならば……ならばあなたが守ればいい!!

過去にそうであったように…
今もそうであるように……


あなたの全てでチャンミンを守って行けばいいっ!!


チャンミン一人も守れないあなたなど、


あなたではないっ!!!



私が尊敬し、
この命を懸けても守りたいチョンユンホ様ではないっ!!!!』




『……もう……遅い………

もう……いいのだ…………ミノ……


これで……いい………。』



『ユノ様っ!!』



ミノはその瞳から大きな涙を流しながら叫ぶ。


『あなたは……幸せになるべきです………

あなたも……チャンミンも……………』


そう言って膝から崩れ落ちるミノ……。


船の汽笛の音と、
ミノの嗚咽だけが船長室に響いた…。







その時だった。


『誰か船に飛び移ったぞーーーー!!』

甲板から声が上がる。


『敵かっ!!
振り落とせーーーー!!』


その声に、
ユノが振り返る。


『チャンミン……チャンミンか……?!』

ミノもまたそう言って甲板へと駆け出す。





甲板で見たのは、
船尾に群がるたくさんの人間。

それをかき分ける様に進むと、

そこには片手で船の縁に掴まり、
今にも船から落ちそうになっているチャンミンの姿だった………。



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