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海賊に恋をして 31


それからチャンミンはユノの食事の全てを担当する事になった。

今までユノが口にする全ての料理を任されていた料理長の指導を受け、

食材選びから仕込み、
完成から船長室に運ぶまで、
その全てをチャンミンが行った。



それは想像以上に大変な事…。



新人コックであるチャンミンは、
誰よりも早く起き、
厨房の掃除から始まる。

しかも、
ユノの担当になったからといって、
それだけをこなしている訳ではない。

これまでの仕事も同じ様に行い、
それに加えてユノの食事を担う。
そしてそれは夜食まで続くのだ。

今は戦に備えて船中が慌ただしい事もあり、
その負担はこれまで以上………。


厨房まで届く緊張感の中、
チャンミンは弱音を吐く事もなく、
ただ一心にその仕事をこなしていった。



それは料理長も周りの仲間も心配するほどだった。



それでもチャンミンはとても充実していた。



毎日が楽しく、
心からやり甲斐を感じていた。

これが自分の居場所。

これが自分に出来る事だと。







一生懸命に作った料理をユノが口にしてくれる。

時間もなく、
全てを食べきれなかったとしても、
食器を下げに行くと、
綺麗に盛り付けた料理はそのほとんどが無くなっている。


そして、
部屋に行くたびにユノに会える。


常に護衛の者も付いている事から、
直接ユノと話しが出来るわけでもないが、


食事を運ぶたびに、
ユノが自分に微笑んでくれる。


『ありがとう、チャンミン』


そう言ってくれる事が何よりも嬉しかった。




食事を運びに行く以外は、
やっぱりユノには会えないし、
正直…あまり睡眠もとれていない。

それでもチャンミンはほんの少しでもユノに会える事が、
嬉しくて嬉しくて堪らなかった。







『チャンミン、頑張ってるな!』

そう言って声を掛けてくれたミノ。

ミノも最近ではすっかり忙しくなり、なかなか会えていなかった。

それでも運よく会えば、
こうしてチャンミンを気にかけ、そしてユノの事を教えてくれた。


『チャンミン、お前が料理をするようになってから、
ユノ様の顔色がとても良くなった。

どんなに忙しくても、
必ず口を付けてな、
いつも小さく笑っておられる。
これもみな…お前のおかげだ。』

『僕は……なにも……いつもお口に合うかそればかり心配しています……』

『大丈夫だよ…チャンミン。
お前の料理はとても旨い。
俺もおこぼれにあやかっているからな。』

『ミノさんも?!』

『あぁ、ユノ様がいつも俺にも分けて下さる。
チャンミンが作ってくれていると、とても嬉しそうにな。』

『そうですか…良かった!』

『チャンミン…明日…明日には領域に入るぞ…。
覚悟は…できてるな…?』

『…はい。僕はユノさんと運命を共にすると決めました。
だからもう…逃げません。
……でも……やっぱり怖いです。
怖いからこそ、
僕は笑って居ようと思います。』

『そっか。チャンミン、大丈夫だ。
ユノ様がきっとお前を守ってくれるよ。』

ミノはそう言って船長室への階段を上がって行った。


その背中を見送るチャンミンだったが、

あれ……ミノさん……足………



『おい!チャンミン!!ちょっと手伝ってくれ!!』

食料庫から突然呼ばれ、
チャンミンは足を引きずる様に去っていくミノの後ろ姿を気にしつつ、
その場を離れた。




『よし……これで戦の間の食料は完成したな……。
領域に入れば、俺たちだっていつも通りには仕事はできねぇ…。
食料はここに保管してあるから、
チャンミン、船長と料理長の指示を待ってから配給するんだ。
決して勝手に動いちゃいけねぇ。
俺たちは直接戦力になれるわけではない。
戦の合図が聞こえたら、
必ずここに集まるんだ。
いいな………。』

『はい。』

『決して…勝手な行動はとるなよ…。
俺たちみたいなコックはなぁ、悔しいけど戦う知恵も技量もない。
そんな俺たちが甲板なんかに行ったって、
ただの足手まとい…。
作戦を乱す事にもなるんだ。

だから…俺たちの仕事を全うするんだ。
それだけだ。』

厨房のみんなの真剣な顔…。

本当に戦が始まるのだと、
チャンミンは身が引き締まる思いがした。



『じゃぁ…明日の4時…。
再びここに集合だ。
チャンミンは部屋に戻る前に、
あれを船長に持って行け。
分かったな。』


それは戦前の最後の夜食…。

チャンミンは毎回戦の前日にユノが必ず口にすると言うある料理を教えてもらい、
それを作っていた。

初めての料理。

それでもこの食事がユノにとって大切なものだと聞かされ、
何度も何度も練習をした。

それを作り切って、
戦前の最後の仕事を完了させたチャンミン。



それを手に持ち、
チャンミンは甲板に出る。


あたりはすでに暗く、
今日は…月の光も弱い。

雲がかかってる事もあり、
いつもより船の上は暗かった。

せっかく作った料理。

そして、ユノが必ず食べると言うその料理を落とさぬよう、
チャンミンは両手でしっかりとその皿を持った。



しかしそのせいでランタンは持てなかった。


チャンミンは良く見えない足元の中、
ゆっくりと歩き出す。

『落とさないように…ゆっくりと……』


その時だった。


ガタンっ!!

船尾の方で大きな音がした。

なに…?

かなり夜も更けていて、
いつもならこの時間は誰もいないはず…。


見上げると見張り番が頭上にいるものの、
その音には気が付かなかったのか、
その視線は遥か向こう。

明日入る海域の方を単眼鏡で覗いている姿が見えた。


チャンミンは不思議と思ったが、
それでもまずは料理をユノさんに届けなければ。

再び歩こうとした瞬間、

ガタンっ……



まただ……。



チャンミンはその音がやはり気になって、
船長室の階段を横目に、
更に暗い船尾の方へと足を進めた。


帆の柱の奥……。

そこに見えた暗闇の中で動く人影…。


顔は暗くて…よく見えない。



『誰か…居ますか…?』




チャンミンはその影に向かって小さく声をかける。




しかし返事はない。


もう少しだけ足を進めると、

その影は船尾に備え付けてある小さな船を下ろそうとしていた。


『こんな時間に…どう…しましたか?』


チャンミンがその影に向かって声を掛けると、


その影がビクンと動き、
そして、
一瞬でチャンミンに向かって突進してきた。


『あっ…!!』


その勢いにチャンミンは船壁に飛ばされる。

その拍子に両手で抱えていた皿が床へと落ち、
料理と共に砕け散った。


ユノさんの…大切な料理が………




『お前……なぜここに…?』


暗闇の中でその人の顔が浮かび上がる…。


『どっ……どう……して…あっ……なたが………ここ……に……?』

背中を強く打ち付けたチャンミンは、
上手く呼吸が出来ない。

それと同時に、

今にも消えそうな弱い月明かりの下、



その顔……その声…その服……

チャンミンがよく知ってるあの人だったのだ。




そして、

突然頬に感じた冷たい感触に……自分にナイフが押し付けられ居るのだと気付く……。


『なっ……なに………どう……して……こんなこと………?』


『ちっ…顔を見られちまったらしょうがない…
チャンミン…お前にはここで消えてもらう…』


その声と共に、

頬にあてられていたナイフの冷たさがすっと消え、
その人影が大きく動いた…………。






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