FC2ブログ

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

- comments

非公開コメント

海賊に恋をして 39

言わずにはいられなかった……。


今まで何度も見て来たユノさんの後ろ姿……

この人の傍にいよう……

この人の傍に居たい………



そう決めた時から…いや……初めてあの街でユノさんに助けられてから……
僕の心は決まって居たのかもしれない。


幼い頃の記憶……

それはとこか途切れ途切れで、

大切な部分しか憶えていなかったけれど、

それでも…確かにあるのはユノさんへの…想い………


ユノさんを守りたくて、

ユノさんの傍に居たくて、

ユノさんと……この先の未来も歩いて行きたい…。


その想いは…きっとこの先も変わる事はない…。


それは棘の道だって分かってる。

それは……今まで思いもしていなかった死と常に…隣り合わせ。


きっとたくさん傷つくと思う。

きっとたくさんの涙を流すと思う。

けれどそんな事はもう……怖くない。

ユノさんが隣に居てくれたら…そんなの関係ない。

共に歩むと決めた時から、


チャンミンの心はただ一つ……



ユノの傍に居る事だけ………。





何もできなかった自分が剣を握り、

そして戦う勇気を教えてもらった。

誰かを守る……

誰かを守りたいと思う気持ち……。


戦う事……それはただ命を守るだけではなく、

そこに宿る確かな想いの中、


誰かの為に、

なにかの為に戦う勇気…。

それが一番大切だって事を……知ったんだ。





この偽りの海賊船の船長であるユノの運命……

民を導き、

民を守るその背中に何度となく教わって来た。

言葉少なく、

それでも時に紡ぐその言葉は、

チャンミンの心の奥の奥まで…響いて離れない。



そんな人が、


『チャンミンを守りたい…』

『こいつだけは傷付けさせない…』

『未来へ行きたい……一緒に……』



そう囁いてくれるのだ。


そんな人に……心を奪われない訳がない……


こんな人の傍から…離れる事なんてできるわけがない。



いや………自分が手離せない……


絶対に…この人の隣にいよう。


なにがあっても、

そんな目にあったとしても……。


チャンミンはその背中を見つめてそう思ったのだ。






今だけでも我儘になってもいいだろうか……


今だけでも…その気持ちに…甘えて見てもいいだろうか……


いや……今だけではなく……この人と永遠に………。




帰るべき街を焼き尽くした憎き海賊……


人の幸を奪い、

代わりに富を手にする海賊……


冷酷非情で…心のない海賊……


そう思ってきた幼い頃…。


海賊さえいなければ、

きっと……僕の人生は変わって居たのかもしれない。


でも……海賊と名乗るこの人達が居なかったら、


今の僕は存在しない……。



憎かった海賊船に乗り、


そこで出会ったたくさんの人達。


そして、


教えられた勇気…。


何よりも深い絆の向こうに瞬く眩いばかりの光………。



その中心に居る人に…僕は……

僕の心はもう……囚われてしまったのだ。




海賊である…この人に………。



僕は……海賊に…恋をしたのだ……。




『ユノさん……僕は……ユノさんが好きです……。

ユノさんを………愛しています………』



囁くように呟いたこの声は…ユノさんに伝わっているだろうか……?


震えるこの身体と、

まるで全身が心臓になったような高鳴りが…伝わっているだろうか……?

少しでも…伝わってほしい……

僕のこんな…感情でも……伝わってくれたら……いい………。





僕は……


僕はもう……


ユノさん無しでは生きていけない。


たとえ、


この先、


どんな事があっても……この人の隣で…生きていたい…


忠誠心だけではなく、


愛で………。




ぎゅっと掴んだその背中………


マントのひんやりした感触の奥に感じるユノさんの温かな熱……。



離したくない……


誰にも……渡したくないんだよ………ユノさん………。




『チャンミン……』


ユノさんの腕が一層強く抱きしめてくれる。


華奢で…ユノよりも小さいチャンミンの身体がすっぽり入ってしまう程に大きなその人…



『チャンミン……俺も……お前を愛してる…………』


高鳴る鼓動の奥に…確かに聞こえたその声……


『俺は……いつ死ぬか分からない……。

それでも伝えたい……

俺は…お前が好きだ……

それだけは…伝えたかった……。

決して口にしてはいけないと…そう自分に言い聞かせて来た。


こんな感情でお前を囲ってしまったら、

きっとお前を壊してしまう…。

それが…怖かった。

でも……傍に居てくれ……チャンミン……

俺はもう……お前無しでは……生きていけないのだ……。

ごめんな………チャンミン……


そして、


ありがとう…………』



先ほどまでの凛としたあの声はどこへ行ってしまったんだろう……


抱き締めるその身体から……ユノさんが震えているのが分かった。


『ユノ……さん………?』


『チャンミン………


チャンミン…………』



ただその名を呼んで、

返事も出来ない程に抱きしめられているチャンミンは、


その背に回した腕をきつく引き寄せる事で必死になって応える。




アイシテル………



それ以外の言葉でどう表現していいのだろう……


ただ傍に居たいのではなく、


愛しているから……傍に居たい…。



風に揺れる黒髪が…好き……

いつもマントのフードに隠れるその瞳が……好き……

決して笑わない……あなたが……好き……

そして、


誰よりも強くて、


誰よりも温かな…その心が……好きだ……


あなたの全てが…愛おしいんだよ……ユノさん……



あなたに勝てるものなど何もない………


剣もふれない。

敵を蹴り倒す事も…出来ない。

人の心の奥を…見つめる事も…まだ出来ない僕だけどね、


一つだけあなたに勝てる気がするんだ…


それはね……、



あなたを好きだと思う心……


きっと僕は…ユノさんよりもユノさんが大事なんだ。



『あなたはきっと……民の為なら……僕の為なら…、


その身を挺して守ってくれるんでしょ…?



でもね、

それは…いや…だよ………

だって、


僕があなたよりもあなたを……守りたいんだ。


あなたが想うよりももっともっと……あなたが大事なんだ。



僕に出来る事なんて何もないけれど、



僕は………、



あなたを愛してます……。』



そう……

あなたなんかよりもずっとずっと……深い場所で………

あなたを……愛しています………。




『チャンミン………』



名を呼ばれるだけで、

もう………ダメ……なんだ。


あまりに愛おしすぎて、

苦しいよ……ユノさん………。


僕はあなたの為なら……何も怖いものなんて無い…。



あなたを失うこと以外…何も。



だから、


生きて。



まだ終わりの見えぬこの戦の向こう側に…連れて行って……。


その先に、


僕らの未来があるならば……………。




ユノさんの手が添えられた頬へと身を委ねる。


『チャンミン……

誰よりもお前を……愛してる…………

たとえ俺に何があったとしても、

このピアスの誓いは……忘れないでいてくれ…………』



それはあまりにも自然に重なる二つの唇……。


温かくて……優しくて……幸せで………。



何度も昇る朝陽に見守れ、


船長室で重なる二つの影は、


その先の未来へ……


どんな未来になるか分からない時代の中で、


それだけは確かに動き出した。


これまで運命が非情ならば、

この先の運命はふたりで紡いでけばいい。


この時代を……ふたりで変えていけばいい。


ユノさんが居るなら、

ユノさんが隣に居てくれるなら、


僕には恐れるものは何もない。


ユノさんが隣に居る………


それだけで僕は…強くなれるから………。







そして、最後の戦いが始まる。



『チャンミン…。今日は決して甲板には来るんじゃない…。
この部屋の隠し部屋……ルハンが居たあの部屋にいるのだ。

いいな……。』


そう言って小さく微笑んだユノ……。


温かな手は…いつの間にか…冷たくなっていた。


チャンミンはその手をしっかりと両手で包んで、


『ユノさん…死なないで……必ず……僕の所に戻って来て……』


涙を零さないように、

必死で笑顔を作った。


大丈夫……信じてる。


ユノさんを信じてるから……

その想いを込めて、

引き寄せた頬にキスをした。


『チャンミン…行ってくる………』



ユノはそう言って、

チャンミンの頭に手を添え、
優しく微笑んだ。


『うん……待ってる……待ってるからね……ユノさん………』


触れられた手が離れる瞬間、

チャンミンが我慢していた涙が一筋だけ零れる。


その涙を指で拭って、

ユノは部屋を出て行った。


決して振り返る事なく、

敵が乗り込んできた甲板へと…………。


争う声が響き渡るその場所へ……。




ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

3 comments

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。