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海賊に恋をして 43



『ユノさんはどこだっ!!』


小さな部屋にチャンミンの声が響き渡った。


その声に、


『ふっ…お前の大事な人はすでに………』


にやりと笑う男…。



その瞬間、


銀色に輝く剣先が男の頬に触れた。


まるでそこに剣だけが存在するように、
その男の後ろからすっと入って来た剣先…。







『俺はここだ……チャンミン……』







『ユっ……ユノさん……!!』



鋭い剣刃を頸動脈に押し付けられ、
男の顔が一瞬で固まる。



『この部屋の物が欲しければどれでもくれてやる…。

ただし……そいつに触れた罪は重い…………』


まだ姿の見えないユノの声は、
地を這うほどに重い……。


一瞬でその場の空気が変わった。

チャンミンでさえも息を飲むほどに……。





『チャンミン…来い……』


その言葉と共に、男の後ろから、

その長い髪が揺れるのが見えた。




首に押し当てた剣………。

その刃は一切ぶれない。

その剣で男の身体を壁側に押し入るその姿がはっきりと見え始める……。



『ユノっ……さん………』


そこに立っているのは、

紛れもなくユノ………


あの黒いマントを身に纏い、
長い髪をしっかりと結んだあのユノだった。




その姿を見て、
チャンミンが握っていた短剣がその手から零れ落ちる。



ユノさん……無事だったんだね………


今まで自分の命すら危ぶまれていたと言うのに、
チャンミンはユノの姿を見て大粒の涙を流した。
 


『チャンミン……』



ユノは鋭い目つきのまま相手を睨み、

そしてチャンミンの名を呼んだ。


その表情とは裏腹に、
とても優しく……愛しげに……。



ユノは剣先を敵に向けたまま、
その背でチャンミンの前に立ちはだかる。


剣先はまだ男の首元。

あまりのユノの気迫に男どもは微動だ出来ない。




『な…なぜお前が生きてる……んだ……。』


『お前たちの罠の事か…?

そんなもの…この俺には通用しない……』


『くっ…くそっ…!!』




隙を狙っていたもう一人の男が落ちている剣に手を伸ばそうとした。


『動くなっ!!』


『ひっ…!!』

ユノはもう一つの剣を腰から引き抜く…。


2本の剣……


ユノは流れるようなその動きで、

完全に2人の男の動きを制した。




『チャンミン…………』


『…はい………』


『どっちだ……』


『ユノ……さん………?』


『お前を殴ったのはどっちだ!!』



その言葉に、

チャンミンに跨っていて男の身体が小さく跳ねる。


『お前か………。

チャンミンを傷付けたのは……。』


『っつ………』


男の頸動脈に押し当てている刃がぴくりと動く。


『ユノさんっ……!!』


その言葉をまるで聞き入れないかのように、

ユノはその腕に力を込める。


男の顔はすでに青白い……。


『ユノさん!僕は大丈夫……大丈夫だからっ…

もう止めてっ!!』


チャンミンは必死になってユノの背中にしがみ付く。





もういい…

僕はもう…平気だから……

だからユノさん…止めて……。




『ユノさん…僕は大丈夫…大丈夫だから……お願い……もう…いいから…』



目の前にいる男たちはすでに限界を越えていた。


ユノのあまりの気迫に、
すでに気を失いかけている。


『ユノさんっ!!』


チャンミンはユノが手にしている剣の柄に手を重ね、


『ぼくは…大丈夫です……。大丈夫だから…ユノさん……もうやめて下さい…』


チャンミンの言葉に、
ユノはすっと剣を下ろす。


それと同時に崩れ落ちるふたつの身体…。


それを確認したと同時に、


ユノは自分のマントを脱ぎ、
チャンミンの身体を覆った。

衣服は乱れ、
口角から流れ出た血…。


それを守る様に、
ユノの大きな黒いマントでふわりとチャンミンの身体を包み込んだのだ。



そこから香るユノの匂い……

そして……生臭い血の匂い……。


よく見ると……ところどころが剣によって切り裂かれている……。


戦いの壮絶さが…このマント一つからも伝わる様だった……。




『残念だったな。お前たちの国は敗北した。』

足元で腰を抜かし、
ガタガタと震える身体を寄り添うように崩れ落ちているふたりに向かって、
ユノはそう言い放つ。


マントを脱いだユノの腕には、

敵国のバンダナ…。


紋章の入ったバンダナがしっかりと巻かれており、

それが勝利の証しだった。



『それは…………』


『陸と海。

我が国はすべてを制圧した。

もはやお前たちに帰る国はない。

今すぐここを立ち去れっ!!』



その言葉に、

ふたりの男は、
縺れる足に何度も転びながら、
逃げるように隠し部屋から出て行った。




その足音が消えた瞬間、


ユノはマントごとチャンミンの身体を強く抱きしめた…。




『チャンミン……良かった……無事で…良かった………』



ようやく訪れた時間……


チャンミンはユノの熱に包まれながら、
全身の力が一気に抜けるのを感じた。



膝が折れる瞬間、

ユノはその腕の力を更に強くして、
チャンミンの身体をふわりと抱き上げた。


そのままユノは、
チャンミンの身体を優しく船長室のベットに横にした。




『ユノさん………』


『チャンミン…良く…頑張ったな……』


そう言いながら、
チャンミンの頬を優しく撫でる…。

そして、
腫れてしまった頬と、
切れてしまった口角にそっとキスをした………。




『ユノさん……僕………』


『チャンミン……チャンミン………』



ユノはチャンミンに覆いかぶさる様にしてその身体を抱き込む。



『良かった……お前が無事で……本当に…良かった………』


今にも消えそうな声…。

先ほどまで敵を威嚇していた人間とは思えない程に優しい声…。


そして、
その人の耳で光る自分と同じ対のピアス………



それを見ながら、
チャンミンはその大きな背中にそっと腕を回した。

僕は…生きてる…

ユノさんの腕の中で…生きている………。




その刹那………、


チャンミンはその腕に巻かれていた敵国のバンダナがじわりと湿っている事に気が付いた。


それを感じた瞬間、
チャンミンは触れた自分の手を見た。



そこには………真っ赤な血……………



『ユノさんっ!!血………血が………』


『大丈夫だ…。こんなもの…掠り傷だ……。』


いや…掠り傷にしては出血が多い…。


チャンミンは抱き留められている身体を起こし、
ユノの腕を見る。


巻かれたバンダナにじわりじわりと浮かぶ赤い血……。


『ユノさんっ!!』

『チャンミン……大丈夫だ。』

『ダメだよ!!』

『ちょっと…手こずっただけさ…。問題はない。』

『でもっ…!!』

『チャンミン……もう黙って……。俺にもっと…お前を感じさせろ………。』






そう言いながら、

ユノはまたチャンミンの身体をふわりと包み込んだ。



1分…1秒も惜しいと言わんばかりに、


ユノはずっとチャンミンをその腕の中に閉じ込めた。




『船長!!』


そんな時間は手下の声にかき消される。


『ミノ様がお戻りになりました!!』


その言葉に、
2人で目を合わせ甲板へと駆け下りる。


甲板は…酷い有様だった。

それはずっと隠し部屋に居たチャンミンが見るにはあまりにも残酷な程…。


息絶えた敵国の人間。

傷付いた仲間たち。

至る事には戦いの跡がしっかりと刻まれていて、

チャンミンは改めてこの戦いの大きさを知る事となった。


『ユノさん…本当に……終わったの…?』

『あぁ…全て終わった……』


ミノが乗った船がこちらに向かって進んでくる。


その帆に刻まれた我が国の紋章…。


それがまるで勲章の様に海風に靡いている。



陸を制したミノもまた……過酷な戦であったであろう…。


それでも船首で手を振るミノの姿に、

チャンミン安堵の息を吐いた……。




『ミノ…ご苦労であった。』

『ユノ様もご無事で……
チャンミンも……。』


2人に向かって微笑むミノは、
やはり身体のいたるところに傷を負っていたが、
それでも勝利の証しである敵国の紋章のバンダナを手にしていた。


ユノがミノに向かって手を差し伸べ、
引き上げようとした瞬間…………、



『チョンユンホ、覚悟ーーーーーー!!』


その声と共に、
突然背後からキラリと光る剣が振り下ろされた…………。




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