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海賊に恋をして 44



『チョンユンホ、覚悟ーーーーーーーー!!』


突然後ろから響いた声。


ミノに手を差し出していたユノの背後に、
きらりと光る剣……




『ユノさん、危ないっ!!』


チャンミンは咄嗟に身を挺して、
ユノの背中を突き飛ばした………。



甲板に強く叩きつけられるユノの身体……


目の前に振り下ろされた剣先が甲板を切りつける。



『ユノ様!!チャンミン!!』


小船から乗り込んできたミノがふたりの前に立ちはだかる。

ユノはひらりと身体を翻し、
腰に携えた剣を抜く。



『チャンミン!!』


ユノを突き飛ばした事で、
チャンミン自身も甲板に倒れ込んでいた。


ユノはその前に立ちはだかり、
チャンミンの腕を掴んで引き上げた。





『お前っ…!!』




2人に剣を向けていたのは、


先ほどチャンミンに覆いかぶさったあの男……。



船から下ろしたはずだったその男が、
ユノに剣先を向けにやりと微笑む。


『船長………………

いや……チョンユンホ………

たとえ我が国がこの戦に負けたとしても、

お前だけは……お前だけは消す必要があるようだな………』


『お前……命だけは助けてやろうと思ったが…ここまでとはな……』


『ふっ……』


互いの剣先が今にも触れそうな距離で睨みあうふたりの男……。


その真横には同じ様に剣を構えたミノ…。


そして、

ユノの後ろで小さな短剣を構えるチャンミン……。



周りには仲間たちの剣先もきらりと光るなか、


その男は言葉を続ける。


『チョンユンホ……お前の部屋で……あるものを見付けた…

それを…ここで出してもいいんだぜ…?

皆に知られて困るのは…お前だと思うんだが……。』


その言葉に、

一瞬だけユノの剣先が揺れた。



……なに……何の事………?


目の前で自分を守るその背中が小さく震えるのが分かる…。

なににも動じなかったユノが、
目の前に居る男の言葉に明らかに動揺している。



ユノ……さん………?




ポケットの中をごそごそと探るあの男の笑みに、
チャンミンはある言葉を思い出す。



『おい…これって国王の……』

『まさか…なぜこれを船長が……』

『おい…船長のチョンユンホは…もしかして……』





それは隠し部屋で身を潜めていた時に聞こえた声……。

それが鮮明に蘇る……。



ユノさんの秘密……

なににも臆さないユノさんが…動揺するほどの……秘密……?


『お前………』

ユノはじわりじわりと男に近づきながらも、
明らかに動揺してる…

『チョンユンホ……これでお前も……』



男がポケットから何かを出そうとした瞬間、



『ユノ様っ!!』


その声と共に、
ミノの剣が男に斬りかかる。


それが合図かのように、

ユノもまた男に向かって剣を振る。


かち合う剣と剣。


二つの剣がぶつかり合う様は、まるで生き物の様に空を舞う。

ユノの剣にも引けを取らないそのに男は、
先ほどの表情とはうってかわり、
獲物を狙うが如く、ユノへと剣を振り下ろす。


誰もふたりに近付けぬ程の戦い……


クロスになった剣から鳴り響く音。


その狭間…、


『船長……お前がなぜ…この船に乗っている…のだ……』

『お前には関係ない事……』

『チョンユンホ……まさか本当に…生きていたとはっ……!!』


再び剣と剣が離れた瞬間、



男の視線がユノから逸れ、

その奥にいるチャンミンと交わった。


男はちらりとユノを見たが、

その瞬間、
くるりと身をひるがえし、
剣の柄でユノの腹を一撃した。


一瞬バランスを崩したユノの隙を狙い、


男の剣先がチャンミンへと向かった。



『チャンミンっ!!』



ユノが叫んだと同時に、





空できらりと光った剣…………。



そして、



『ぐぉぉぉぉ……』


『うっ………』



甲板に響いたふたつの声…………





咄嗟に目を閉じてしゃがみ込んだチャンミンだったが、


その目の前に………真っ赤な血がボタボタと落ちて来たのだ………。








自分の足元に落ちる真っ赤な血…………


それは止まる事なく降り注ぐ……。

チャンミンは言葉も発する事ができないまま…ゆっくりと顔を上げた……。






そこには、


チャンミンを守る様に、

その前に立ちはだかっている人………。

真っ赤な血を流しているその人は…、







右腕を失ったミノの姿だった……………。





そしてその奥………、


あの男が………背中を大きく斬られ……倒れていたのだった………。



ミノの奥に……肩で大きく息をしながら、
男を斬ったユノの………姿………。


その男の上に落ちているのは…黒い髪………


振り切った剣先は…自らの長い髪をも斬る程だったのだ………。






『ミノっ!!』
『ミノさんっ!!!』



2人は今にも倒れそうなミノを支える。



『ユノ……様…………

チャン………ミン………』





そこにあるはずの腕が……ないまま……、

その身でチャンミンを守る様に立っていたミノ……。





『私が……お守り……します………

ユノ様も………ユノ様の大切な………チャン…ミンも………

なにがっ……あっても……この私が…………


この…私が………』


消えそうな声を必死に出そうとするミノ……。


切り落とされた腕から滴り落ちる真っ赤な血……。



『ミノっ!!』

2人に支えられないと、
今にも崩れ落ちてしまうその身体……。

その身を更に強く包みこむユノ……。

ゆっくりと甲板に下ろす身体はすでに力を失くしている…。


ユノの腕の中……、


『ユノ…様……私は幼い頃……あなたに…お約束……しました……

私は…なにが…あっても……、

あなたも……あなたの秘密も……お守りすると………

良かった………無事で………よかっ……………』


その瞳が……大きく揺れている。

『ミノ……』

『チャン……ミン………お前が斬られたら……

お前の美味い飯……もう……食えなるからな………

ユノ様……は…好き嫌いが……ある……

お前の作った食事じゃないと……食べて下さらない………

俺の代わりは……居ても………お前の代わりは……誰もいない………

だから……だから…………』




『ミノさんっ!!』



チャンミンがその名を呼んだ時には………ミノはすでに気を失っていた。


何度呼んでも…何度その名を呼んでも、


ミノの瞼が再び上がる事は無かった………。



『ミノを早く陸へ運べ!!
国王に……国王の元へ!!』


『はいっ!!』


ミノの片腕が白い布に覆われる。

それでもじわりじわりと浮かぶ赤い血……


大勢の仲間たちによってミノは陸へ向かう船へと乗せられた。


それを見送ると、
ユノは胸の前で手を重ね祈る…。

それを見たチャンミンもまた…同じ様にその船を見送った。


生きて……死なないで………
ユノさんには…ミノさんが……必要だから………


その船が見えなくなるまで、
2人は何も話さず、
ミノが無事であるようにと天に祈った…。



船が見えなくなると、
ユノは既に絶命した男のポケットから何かを取り出した。



『ユノ…さん……?』


その声に、
一瞬躊躇ったユノだが何も言わずそれを懐に入れた。


ミノの血で真っ赤に染まった服……

ミノが差し伸べた手が触れた頬も赤く染められている……。



『戦は終わった…………。
皆のもの……ご苦労であった………』








甲板は恐ろしいほどの静けさに包まれた。





船員たちがそれぞれの場所へ散るなか、



チャンミンは静かにユノの傍へと近寄った…。


『ユノ…さん……』


『チャンミン……俺は……俺は………』

握りしめた手が小さく震えている。

『ユノさん……』


その先を続ける事が出来ないユノに、
チャンミンは黙ってその手に自分の手を重ねた。


そして、

この戦が夢であったかのように…、
穏やかで静まり返った海をただ黙って…共に眺めた……。






その夜………



戦の終わった船は……本当に静かだった。


戦の名残を残す船を慌ただしく片付けていた船員たちも、
久し振りに安堵の眠りにつく。

厨房の仲間たちも、
久し振りに穏やかな気持ちの中で料理を作り、
船員たちをねぎらった。




戦は終わった……




戦いに勝利し、
皆それぞれに緊張の糸は解れたが、
それでも誰も言葉を発する事は無かった。



ユノは……ミノを見送ってから船長室に籠ってしまった。


命令を出した後、
その姿を誰も見ていない。


去り際、

チャンミンの頭にそっと触れたユノ……。


その顔は…あまりにも悲しげで、
去っていく後姿は……チャンミンですら…言葉をかけるには…あまりにも儚かった……。



厨房の隣にある寝床の天井……

それを見つめながら、
チャンミンはなかなか寝付けないでいた。
何度も繰り返す寝返りは、
傍にいた料理長にも伝わってしまう。


『戦は終わった…。チャンミン…今日はもう…休もう……なっ…?』

そう言ってくれた料理長だったが、

やはりチャンミンはユノの事が気になって仕方なかった。




カップから立つ湯気を見つめながら、
チャンミンは船長室の前に立つ。


ユノが好きだと言った甘めの紅茶…。

こんな時…なんて声をかけていいのか…分からなかったが、
言葉の代わりに考えたのが……温かな紅茶…だった。

もうずいぶん前に淹れたのに、
なかなかドアをノックする事も出来ずに、
どれくらいここに立っているだろう……。


中から物音ひとつしない。


でも……どうしても……ユノの傍に居たかった。

自分のせいでミノさんが……。

自分を守ろうとしたせいで…ユノさんの大切な人が傷付いた……。


だから……

だから…………。




チャンミンが勇気を持ってノックしようとしたその時……



『チャンミン…入れ………』



船長室の奥から…ユノの低い声が聞こえた…。


それはそれは…とても悲しげな響きでチャンミンに届いたのだ……。



 

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