FC2ブログ

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

- comments

非公開コメント

海賊に恋をして 46



『ユノさん…少しだけ我慢して下さい…』


チャンミンはユノをソファまで誘導しその身体をゆっくりと座らせた。

雲に隠れてしまった月がしっかりとその姿を現し、
黄金色に染められた空から届く月明かりが船長室を照らしている。

その淡い月明かりの中、

チャンミンはユノの上着をそっと脱がしていく。

露わになるユノの上半身……。


その姿に自分の鼓動が早くなるのを感じながらも、
チャンミンは湯を沸かし、その傷付いた身体を清拭していく。

布を湯につける度に、
その色は真っ赤に染まっていく。

それはユノ自身の傷から流れた血だけではなく、
既に渇いてしまったミノの血でもあって。

チャンミンはそのひとつひとつを丁寧に拭き上げ、
本来のユノの肌の色を取り戻していく…。


背中に残る大きな傷は……昔、チャンミンに出会った時のあの傷で。


『背中の傷なんて…かっこ悪いだろ…
背中の太刀傷なんて…敵に背を向け逃げた証…だからな…』


昔……そう言いながら苦笑したユノだったが、
チャンミンは知っている。

これは…仲間を守って斬られた傷だという事を…。



『手負い傷…だ…』


そんな事を言いながらその傷を隠そうとするユノだったが、

あの時…まだ幼かったチャンミンを助ける為に、
こんな大きな傷を負いながらも懸命に洞窟まで運んでくれた事が鮮明に蘇る。


『生きろ……』

そう言って守ってくれたユノ……。


今までいつもマントで覆われていて気が付かなかったが、
ユノの身体には大きな痣や切り傷がたくさんあった。

腹にも胸にも腕にも…。

それはあまりにも多くて、
こうして生きていることすら…奇跡のようで……。


無数に残る過去の傷跡に重なる様についている新しい傷…。

この国一番の剣士と呼ばれるユノの身体に残る傷を見て、
いかにこの戦が凄まじかったか、その傷の全てから伝わってくるようで…。


ユノの傷を一つ一つ綺麗にしていくたびに、
チャンミンは目の奥が熱くなるのを抑えるのに必死だった。


自分が泣くわけにはいかない。

でも………でも………。


自分が傷付いている訳ではないのに、
ユノの傷に触れる度にまるで自分が傷付いている様に…あまりにも痛かった。


止血する様にきつく巻かれた布をそっと外す…。


その腕に残る4本の大きな傷…。

そこからはまだ血が流れていて、
月の光に照らされてキラキラと光を放っている。


その傷を優しく拭きながら、
ついには透明な雫がその腕に落ちた。

『うっ……ぐふっ……くっ……』


我慢しても我慢しきれない…。

痛いのは自分じゃないのに、
辛いのは……自分じゃないのに……。


『…泣くな…チャンミン…俺は大丈夫だ……』


そう言って、
ユノの大きな手が頭にそっと添えられた。


『大丈夫…じゃない……

大丈夫じゃないよ…ユノさん……

僕には聞こえます……

ユノさんの心が泣いているのが……聞こえます……』


『チャン…ミン……』


『痛いのも…我慢して…辛いのも…我慢して……

こんなに傷付いて…大丈夫なわけ…ないです……』


『チャン…ミン……』


『ユノさんは…生きる資格があるかって…僕に聞きました。

僕は…ユノさんに命を救って貰った…。

ユノさんが生きろって…教えてくれたんです。

僕が生きる意味は……ユノさんの命…そのものなんです……。

だから……だから……ユノさんも生きて…。

それで僕も生かされる…。

僕は生きたいです……

これからもずっと…ユノさんの隣で……

こんなにたくさん傷ついても……ユノさんはちゃんと僕の前に立ってくれてる……。

誰かに剣を向ける事も…誰かの命を奪う事も…僕にはまだ分かりません…。

でも…あなたと生きる為なら、
あなたと一緒の道を歩けるなら、
それが例え棘の道でも…それでも僕は生きていきたい…。

あなたの傍で、

あなたと一緒に……ずっと……ずっと………。』



『チャンミン……』


ユノの手がチャンミンのピアスに触れた。



『お前は強くなったな……

本当に……強くなった……。』


『全部…全部ユノさんが教えてくれました……

僕に…生きる意味を……』

チャンミンの手もゆっくりとユノのピアスに触れる。



互いに触れた指先で光る対のピアス…

2人の…愛の証しのピアスに触れながら、
そこに言葉は無くても確かに伝わる想いがある。


『僕はあなたとなら…生きていける。

あなたと生きていく…そう決めたんだ…。』


そう……たとえこの先にどんな事が待っていても、

この人が居るなら…この人が導いてくれるなら、

きっと僕は歩いて行ける。



この人の背中を見て、

この人の手を握って…。


そのとなりで…ずっと………。




チャンミンは腕に残る4本の傷にそっと唇を這わせた……。


僕に下さい……

あなたの傷の…ほんのひとつでもいいから………。







『ユノ様!!ユノ様!!
夜分遅くにすみません!!
ミノ様が!!ミノ様がっ!!』


突然ドアの奥から聞こえた声に、

互いに握り合っていた手に力が入るのが分かった。

ユノの身体が小さく跳ね…不安げにチャンミンの瞳を見つめる。



『ミノ様はご無事です!!
何とか危機を脱し、意識が戻ったとの事…!!

国王が…国王様が救って下さったのです!!』


その言葉に、
チャンミンはユノの瞳を見ながら小さく頷いた。


『分かった…ご苦労であった。』


冷静に紡ぐ言葉とは裏腹に、
ユノの表情はすでに崩壊していた。

あまりに穏やかで、
あまりにも…優しげで……。


『ユノさん……』


『チャンミン……ミノが……ミノがっ……』


『…はい…はい……』


互いに額を付け、
その頬に流れる雫を止める事が出来なかった。


その刹那……、

ユノの身体がまるで身体中の全ての力を使い果たしたかのように、
チャンミンの身体に倒れ込む…。

そして、
チャンミンの耳元で聞こえたのは…ユノのあまりにも穏やかな寝息……。



『ユノ…さん……?』


そう言って覗き込んだユノの顏は、

この戦が始まってから何日も眠る事なく戦い抜いた戦士の顏ではなく、

あまりにも穏やかで…優しい寝顔だった。



チャンミンは何とか手を伸ばして掴んだブランケットでユノの身体を包み込む。

チャンミンの胸元に顔を押し付け、
そこから聞こえる規則正しい寝息……。



もう…敵に背を向ける事も、

国を守る為に剣を振る事も止め、

いまはただ…その身をチャンミンに預け目を閉じるたったひとりの青年の顔……。


チャンミンはその大きな背に手を置き、
ゆっくりと…優しくその背中を撫で続ける。


見上げた先には、
大きな月………。


入り込む波の音と、
ユノの寝息……。


チャンミンはその月を見上げて願う。


どうか…この人がその心を砕く事ない穏やかな時間が訪れますように……

どうか…この人がこれ以上傷付く事なく…笑っていれますように……。



そして、


この人の隣でいつまでも生きていけるよう…、


大きな月を見上げて祈った…………。


ユノさん………


いつか僕が…あなたを守れるように、

もっともっと…強くなるから………。


だから生きて……。

僕に……愛されてください………。




ランキングに参加しています。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

4 comments

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。