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海賊に恋をして 48

せっかく淹れて来た紅茶も冷めてしまった。

それでもユノさんが真っ直ぐ僕を見ている…。

膝の上に置かれた手が忙しなく握られたり…閉じたりしている。



僕はただ待った。

ユノさんの言葉をだた…待った…。



聴こえるのは…もう生活の一部になってしまった波の音……。

最初は慣れなかった船の揺れも、
今では心地いいと思えるようになった……。


海の上に存在する全てに身を任せながら、
チャンミンはユノからの言葉だけを待った。


ユノが抱えているもの…。

それは随分前から気になっていた。


ユノの事を愛していても、
本当は知らない事の方が多い。


ユノとの時間は…いまだあまりにも少ない。

それはミノに勝てるわけでもなく、
この船に乗っている人達の中では、
本当は自分が一番分からないのかもしれない。

ユノの事が知りたい。

ユノの全てを知りたい…。

そう思って居ても、
本当は劣等感の塊で、
それを口に出して聞けないもどかしさもあったし、

なにより…今…自分の目の前にいるユノが全てで、
今のユノを…愛している。

でも……知らない事の方が………多い…。

特に…ユノの過去……

自分が助けてもらった時にも、
ユノはなにかに追われ大怪我をしていた。

そして、

ミノに連れて行かれ、
チャンミンの前から消えてからあの街で再会するまでの事は…一切知らない……。



しかし、隠し部屋で聞いた敵国の人間のあの言葉……。



そして、

その言葉に動揺したユノさんの背中。



本当は…本当は心の底では、
自分の知らないユノさんの事が知りたくて堪らなかった。

ユノは一体…ユノが抱えるものはなんなのか……。




でも…言えない。

聞けない…。

ずっとずっと…そう思っていた。


だからこそ、
だたユノの言葉を待つチャンミン。


自分の息遣いも、
暴れる鼓動の全ても聞こえてしまうんじゃないかと思えるほど、
船長室の中は静かだった。






『チャンミン……』

『はい………』


膝の上の手の平が…ぎゅっと握られた。


ユノはチャンミンの名を呼び、
その瞳を見つめ、
一瞬…躊躇う様に目を伏せた。

行き場のない視線は、
だた左右に揺れるばかりで、
その視線がユノの迷いを伝えてくる。

常に凛としているユノが、
その背を丸くし全身背戸惑いを伝えてくる。


この人はいったい何を言おうとしてるのか…。

こんなに迷うほど…なのかと、
ユノのそんな態度にチャンミンは不安が募っていく。



『これから俺が言う事は……お前にとって…良い事ではないかも知れない。
でも……お前には伝えたい…。
お前には…知っていてもらいたいと思っている……。』


『……はい』



『チャンミン…俺は………

陸に着いたら……この船を降りる………』


『えっ………?』


それは思いもしなかった言葉………。


『いや…正確には…降りなければならない時が来た………と言うべきか……。』


『そんな………』


自分はこの船でずっとずっとユノと一緒に過ごしていくのだろうと思っていた。

いや……この船に乗る時、

そう決心して飛び乗ったのだ。


ユノに閉じ込められ、


『生きろ……』


そう言われたあの日を思い出す。


貰ったツイのピアス…。

これに誓った……。


ずっとずっと…ユノの隣に居ると……。



その背を見て今日まで来た。


舞うように剣を振るユノを…ずっとずっと見て来た。

国の為にその心を偽り、
それでも全てのものの前に立ち、
その身を傷付けながらも戦ってきたユノ………。


そのほんの一部しか見れなかったけれど…、
そのほんの一瞬しか傍に居れなかったけれど、

船長であるユノがこの船から降りる………。


それって……、

……もう……終わり……という事なの………?


 『そんな………』


『…もう…この船には……戻らない……』


『…………うそ………じゃぁ…僕は…………』



チャンミンの居場所はもう…ここしかない。

この船でユノと…仲間と言える人間たちとずっとずっと生きていくと決めたのに、


ユノがこの船を降りる………?

もう……戻らない………?





『うそ…ですよね……?

あぁ…そうか…!もう戦う必要がないからですか……?
それともしばらく航海は無いという事ですか?

あっ……少しだけ休むってことか…!

ユノさんも怪我しているんだし、
ミノさんの事もあるし。

すぐにまたこの船に乗って警備にいくんですよね?

その為に一刻だけ降りるって……そう言う事ですよね?!』




チャンミンは不安を掻き消すように一気にたたみかける。


それでもユノはぴくりとも動かず、
ただチャンミンを見つめる。


『いや……もう…船には2度と…乗らない……。

ここには……戻れない………。

ひとりで…降りる……。』


『そんな……

じゃぁ…僕は…どうすればいいんですか……?

僕とも……さよなら……と言う事…ですか………?』


ここに入って来た時から熱くなっていた目の奥から、
止めどなく溢れはじめた涙……。

はらはらと落ちる涙は、
膝の上でぎゅっと握られていたチャンミンの手に…腕に…膝に…落ちていく。



『……チャンミン……泣く…な……』


『ユノさんはっ……一緒に居るって…ずっと一緒に居るって言いました……。
僕が居ないと生きていけないって……そう……言った……。』


『チャンミン……』


『それなのに、
どうしてですか……?
どうして…そんな事を…言うんですか…?』

『チャンミン…聞いてくれ。』

『や…です……いっ…や……』

頭が混乱してきた。

ユノは何を言ってるのかさえ分からないし、
自分がなんでこんなにも泣いてるのか分からない。



また…ユノは自分を置いて行くと言うのか……


嗚咽で息が苦しい…。

チャンミンはフラフラと立ちあがり、



『ユノさん……それは僕を…置いて行くって事ですか……

また…僕を…置いて行く……のですか……?』



目の前に座っているユノを見下ろしながら、チャンミンの目から零れる涙を抑える事が出来ない。


そんなチャンミンを見上げながら、
ユノはゆっくりと立ちあがり、

チャンミンの隣に立つ。

そして、


チャンミンの肩にそっと手を置き、


『チャンミン…ちゃんと最後まで聞いてくれ…。

お願いだから…

俺の事を……

本当の俺を……知って欲しいんだ……。』



そう言ってチャンミンを誘導しながら、
ソファに共に座る。


そして、


胸ポケットから何かを取り出し、
ゆっくりとチャンミンの前に差し出した。

手の平に乗せられたもの……。


『チャンミン…これが何か…分かるか……?』


手の平の上にはネックレス……。



シルバーの丸型のプレートにあしらわれた高貴な模様……。
その中央には紋章らしき…もの……。




『これって………。』


『これは……我が国の紋章………。

そして、

これは……王族の者にしか手に出来ないものだ………。



これは……


これは俺のだ……………。』






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