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海賊に恋をして 53

船を降りるのはとても…寂しかった。

涙と歓声に溢れる甲板の上で、
最後にみんなで剣を空に向けた。


変わらない絆の証し……

変わらない家族との愛…………


相手は違えど、
海賊によって大切な屋台を失い…居場所を失った。

それでも今は……隣で凛と立つこの人が居るから、

僕はもう寂しくない。


ユノさんと出会って…僕の人生は大きく変わった。

幼い頃に出会っていたこの運命の人との残りの人生……きっと寂しくない…。


この人の背にどんなに大きな過去と未来が待っていようとも……僕は決してこの人の傍から離れない。

互いの耳に光る対のピアス……。


それが…僕とユノさんの命の証しなんだ。



決して失いたくない…僕だけの道はこの人と共にある………。


一度も振り返る事なくユノさんの隣を歩き、港町を抜ける。


国王の住む王殿は…ここからかなりある。


ユノさんは迷うことなく、
その足を1歩1歩と進めて行く。

『ここから何日間も歩かなくてはならない。大丈夫か?』

たった一言だけユノさんはそう言った。

『はい。僕なら大丈夫。覚悟は出来てるから。』

正直…体力のない僕は、ユノさんの歩幅に合わせて歩くのも大変だったが、
そんな事は言ってられない。



道の途中でユノさんは他愛無い話をたくさんしてくれた。


王殿に居た時の話や船での事。

ミノさんの事や…妹の事。

その一つ一つにあまりにも大きな意味があって、
その度に僕は泣けてしまって。

そんな僕の頭を撫でながら、

『泣くな。チャンミン。それをこれから取りかえしに行くんだ。

お前とふたりでな……』

そう言ってくれた。


僕にはユノさんに話せるような過去は無かったが、父と母の事を話した。


『チャンミンの事も…知りたい…教えてくれ。』

ユノさんはそう言いながら、ゆっくりと僕の隣を歩いた。


夢中で話していたが、
いつの間にか僕の歩幅で歩いてくれている事に気付く。


城への道……。
気持ちは早るだろう…。
早く国王のもとへ…父の元へ向かいたいはずなのに、

息が上がる僕を気遣ってくれたのかな………。

1歩前を歩いていたユノさんが、いつの間にか隣を歩いていて、
小さな石ころにまで躓いてしまう僕を守るかのように、
僕の隣を歩いてくれたんだ。

そんな小さな気遣いが、
僕にとっては胸を熱くさせる程嬉しくて……。

言葉ではなく、
常にその態度、その行動で示してくれるこの人が……やっぱり…好きで。


野ざらしの場所でその身を寄せ合うように眠りについたり、
決して豪華ではない食事や、時には固いパンを食べる時だって、
ユノさんが隣に居てくれる……それだけでその日々すら…愛おしかった。


そんな日を何日か過ごしながら、
王殿へ繋がる最後の城下町に着いた。


この頃になると、
ユノさんはマントのフードを深く被りはじめた。

ここまで来てしまうと、
さすがにユノさんの顔は知られている様子で、
僅かに見える唇から顎先が…緊張している様にも見えた。


『チャンミン、この先は俺の名を呼ぶな。』

ユノさんはたった一言だけ言って、
僕の手をぎゅっと握った。

『決して俺から離れるな。なにがあっても…離れるな。』

そう言い、
その熱はすぐに離れてしまったが、
それでもその背中が……その一言が……これから起きる全ての事が命懸けだと思い知る。


もうすぐ夕刻を迎えようとしている………


城が…あまりにも大きな夕陽の奥に見えた。


あれが………ユノさんの…………。


街は賑わい、傍から見ればここは人々の幸せそうな笑顔で溢れる素敵な街に見える…。

けれどひとつ裏通りを見れば、
その風貌からも達の悪い人間だとすぐに分かる。

明と暗……。

くっきりと分かれている…そんな街だった。


『チャンミン、今日はこの街に泊まる。
知り合いが居るんだ。そいつの宿に行く。』

『はい。』

『そいつは俺の幼馴染み……全て知っているから安心しろ。』

『はい。』

さっきまで隣を歩いていたユノさんか、僕を守るかのように少し前を歩く。

大勢の人混みをかき分けるように進むユノさんから離れない様に、
必死になって歩みを進める。

街は活気に満ちていて、
ところどころでは屋台もランプを灯しながら品を売っている。


『さぁさぁ、まけとくよー!』

威勢のいいおばさんの声に、
視線を少しだけ移すと、
そこには色とりどりの髪留めが売っていた。

繊細に編まれているそれにしばし視線を向けていたが、

『チャンミン、そこだ。』

ユノさんの声に、
いつのまにかユノさんと離れていた事に驚きながら、急いで駆け出す。







裏通りを少し入る。

さっきまでの明るさは無く、
振り返る通りとは全くその景色が違って見える。


決して綺麗ではないその小さな宿にユノさんが1歩足を踏み入れると、


『ユノ……?ユノじゃないかっ!!
お前……お前………』


そう言いながらユノさんに抱き付いて来たその人に驚く。


『ユノ……ユノっ……』

涙声で話しながら、
ユノのマントのフードを脱がせ、
その顔をしっかりと見つめるその人……。

『ドンへ……心配かけたな…………』

『ったく……本当だよっ!!

俺がどんだけ心配してたと思ってんだ…………。』

何度もユノさんの名を呼びながら、
懐かしむ様に見つめているその姿…。

ちょっとだけ…感動すら覚える。


『悪かったな……。

でもさ、その前に…連れが腹を空かせてる。

お前のアレ……作ってくれよ。』


『ん…?連れ……?』

『あぁ。俺の一番大切な奴だ。よろしく頼む。』

『もしかして……君……チャンミン…君……?』

『えっ…?』

『ミノから前に…聞いてたんだ。さっ!入って。城の人間に見られたら大変だ。
早く入って。』


そう言ってその人は、僕とユノさんの腕を掴んで微笑んで見せた。



『お前のシチュー、やっぱり美味いな……。』

『おう!俺も色々あったが、いまだにこうしてここを守ってるよ。』

『チャンミン、美味いか?』

『はいっ!とっても…。』

ふたりに見つめられて緊張したが、
ドンへさんと言う人はとても笑顔が優しかった。


それよりもなにも、

ドンへさんがユノさんに向けるその笑顔が…とても優しくて、
母を思い出してしまった。


あったかな料理……。

その身を案じるその姿……。

ユノさんにとってこのドンへと言う人はとても心強い存在なんだろう。

街に入った頃のあの緊張して表情はなく、
今はとても穏やかだ…・。


『ユノ、早く湯でも浴びて来いよ。』

『あぁ、そうさせてもらう。
チャンミン、ここで待てるか?』

『はい。』

『ドンへ、チャンミンに手ーだすなよ。』

『分かってるよ!』

ユノさんは僕の頭にポンと手を乗せて部屋から出て行った。


『チャンミン君、ユノに愛されてるね?』

『えっ…そんな…』

『ユノのあんな顔…久し振りに見た……。
君のお蔭だな。』

『いえ…僕はユノさんに何もできないです……


あっ……!!』


『ん?どうした?』


『ドンへさん、お願いがあります。僕…どうしても行きたいところがあるんです。

ユノさんには内緒で…行きたい場所があります…。』



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