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海賊に恋をして 63

『さぁ…ゲームを始めよう…………』

ユノのその一言に、
周りの空気が一気に変わる。

ユノはゆっくりとワイングラスの並ぶテーブルまで歩み寄る。


『話が早いなぁ、ユノ。

さぁ、楽しいゲームのはじまりだ。

俺を楽しませてくれ。』


兄はそう良いながらチャンミンを手荒く突き飛ばす。

床にたたきつけられたチャンミンは、それでもすぐにその身を起こし、

『ユノさんっ!ダメっ!!

そんな事……そんな事しなくたっていいからっ!!』


ユノを真っ直ぐに見つめ、その身を震わせながらチャンミンは叫び続ける。

『僕は…僕はずっとユノさんと居たいだけなんだ!!

そこがどこであろうと……たとえ死んだって…ユノさんの傍に居たいだけなんだっ!!』


『うるさい猫を黙らせろ!!』


兄のその一言に、

兵の2人がチャンミンを押さえつけ、床へと顔を押し付ける。

『つっ!!』

『俺はゲームをやると言ったんだ。


だから…チャンミンに触れるな。


誰もチャンミンに触れるなっ!!!』


ユノのその声とあまりに鋭いその瞳に、
チャンミンを押さえつけていた兵は瞬時にその手を離す。

『チャンミン…黙って俺を見ててくれ。

お前なら出来るよな…?

俺を……黙って見ててくれ。

そして…、

俺を信じろ。』


そう言ってユノはなんの躊躇いもなくワイングラスの一つに手を伸ばし、

一気に飲み干した。


『ユノさんっ!!!』



『ほう…まずは毒入りを免れたようだな、ユノ。


さぁ…次はどれにする?』



なんの躊躇いもなく手を伸ばすユノ………。



その姿にチャンミンは息をするのも忘れるほど………その身を固くしてユノを見つめる。



もう……言葉を発する事もしない……。


いや…もう…出来なかった。


躊躇いもなく飲み干すその時、


ユノはまっすぐにチャンミンを見つめていたからだ。


その目が、


信じろ…チャンミン……


そう言っているようだったから……。


俺をちゃんと見ていろ……。


そう……伝えて来たから……。


1杯を飲みほすごとにユノはワイングラスを壁へと投げつけた。


砕け散るガラスの音が、

静まり返った部屋の中の唯一の音……。



その破片が心に刺さる様で、いちいち胸が苦しくなるチャンミン………


それでも見つめた…


たった一人の大切な人を……。



交わり合う視線で……ユノとチャンミンは互いを支えていた……。






『さぁ…ユノ…最後の二つだ。

お前は運がいいらしいなぁ。


でも…それもこれで終わり………。



さぁ、選ぶがよい!!!』



テーブルの上にあるふたつのグラス………。



僅かな光の中でも…キラキラと光を放つその鮮やかな色。



『ユノ……さん…………』


ようやく声を出したチャンミンの頬には、幾筋もの涙の痕。


ガタガタを振るえる身体を必死に自分自分で包みながらも、


それでもなお……ユノだけを見つめる。



大好きな人……


この世で一番………大切な人………。


その人が……そんな人が今……自分の為にその命をも捨てようとしている…………。



ただ真っ直ぐに自分だけを見つめて……。



『チャンミン……もう泣くな……。


俺は大丈夫と言っただろ?


だから泣くな。


ちゃんと…俺を見ていてくれ。』



『ユノさん………』



『別れの言葉はそれだけでいいのか、ユノ…。

お前は俺と血を分けた弟。

だがな…ユノ、国王はひとりでいいのだ。



どちらが真の国王か…天に決めてもらおうではないか!!!』


兄はそう叫びながらユノを煽る。



その顔には笑み…。





『さぁ!ユノ!!選ぶがよい!!』


そう言いながら、

チャンミンへとゆっくりと近付き、


チャンミンの首へとその長い剣を押しあてた。


『さぁユノ!!選ぶのだ!!』



チャンミンに押し付けられた剣から血が滴り落ちる。



しかしチャンミンは簸るがない。




苦痛に顔を歪める事もなく、ただユノを見つめた。



もはや痛みなどない。

どんなにこの身が血を流そうと……チャンミンの視線は1秒たりとも愛しい人から離れない……。



ユノが信じろと言った。


だから……だからこそ、絶対にこの目は逸らさない。



『お前など…怖くない。

僕は……僕は…ユノさんが僕を見てくれるなら、

何も怖くないっ!!!』



『チャンミンとやら……いい根性だな。


ならば見るがいい。


その大きな瞳でユノが死んでいくのをな……



さぁ、ユノ、時間切れだ。



自ら地獄へ落ちるのだ!!』




その言葉と共に、
再び剣がチャンミンの喉へとくい込んでいく。



『っつ……』


膝が…落ちる……一瞬でも力を失えば、この剣は確実に僕の喉を裂くだろう…。

それでもかまわない…ユノさんさえ…生きてくれたら…………。


ユノさんがその瞳で…僕を見届けてくれたら……。






僕さえいなければ…ユノさんは確実にこの人を討てるのに……。


『うっ……くっ……』


自分が情けない…。

この剣を振り解ける力が僕にあったなら……。


あの時……僕が戻らなければ…ユノさんは……ユノさんは………。


『ご……ごめんなさい…ユノさん………


ユノさん……こめんっ……なさい………









愛してます………



ユノさんを…ずっとずっと………愛してます………






『黙れ小僧っ!!!


男が男に愛してるだと………?


やはりユノ…お前は狂った王子だったな。


こんな小僧の為にその命を差し出すんだからな。


まぁ…いい。


どうせお前はここで死ぬのだからな。』







『黙るのは…お前だ。

黙って俺の最期を見届けろ。』




『ユノ…さん…………?』



『ふっ…。お前もこんな人間の為に命を捨てるのだな。

国王と同じ……。

人の為にその命も惜しくないとは…。




人間とは…愚かなものよのう………。


ユノ……お前が国王になれぬまま死ぬのは、その心のせい…………




その弱い心のせいなのだ。



自己犠牲か?



ふっ…それによって何を手にする?




命が無くなれば、全てが終わるのだ。




大切なのは生きる事。


生きてこその王なのだ。


その為に邪魔なものは排除し、自らの道を作るのだ。


心も過去も全て捨て、明日を見るのみ。


自分が生きる道を進むだけなのだ。


愚かなユノ………。


さぁ、自ら暗黒へ落ちるのだ!!!』


兄はそう言って、ほくそ笑んだ。




『この国の王子は俺ひとりだ!!



今までも…これからもだ!!!




早くしないと…こいつが先に死ぬぞ…ユノ……。



それとも先に殺してやろうか…?



この愛しいチャンミンとやらを!!』




更に力を加えたその剣がチャンミンの首へと食い込んだ。



『っ…ユノさん…ぼくの事は…いい…から。

飲んじゃ……ダメ………。

飲ま……ないで………。

お願いだから……僕を見捨てて…………。


僕さえいなきゃ…こんな…やつ……簡単にっ…。』





『うるせ―ガキめっ!!』



『……やめろ…チャンミン……。』



『ユっ…ノ…さん……?』







『兄さん…あなたが望むなら…俺は喜んであなたの前で死にましょう。



でも…それはあなたの為じゃない。』




ユノがゆっくりとグラスに手をかける。




『ほほう……観念したか、ユノ。』




『俺は国王になどなりたくもない。

国王になりたいなど…この世に生を受けてから一度だって願った事はない。


ただ…あなたと……兄と共にこの国の未来を見て見たかっただけ………。


でも…それは叶わぬ願いだと知った。



今日までの日々で…知ったんだ。




だから…俺はあなたが望むなら喜んで死にましょう。』







『ユノさんっ!!だめっ!!ダメ………』






『でも…………。』





その言葉と共に、一度ワインへと落としていた視線がゆっくりと上がりチャンミンをを見つめる………。





『チャンミン………


俺は死ぬことなど怖くはない。


これが怖いのは…俺がこの世で一番恐れているのは…チャンミン…お前を失う事だ……。


お前が居ない時間など…なにが幸せであろうか………。


お前の為になら…俺は喜んで死を受け入れる…。





でも……お前には生きてほしい。


絶対に生かしてやる。


そして…必ず……どんな時でも…笑って居てくれ…………。




そして…、



お前の中で生かされる俺と…この先もずっと…


ずっと一緒に………………。』






そう言ってユノは一度手にかけていたワイングラスではなく、


もう一つのワインを手にし、





一気に喉へと流し込んだ。







『ユノさんっ!!だめ………ダメ………!!』





ワインを飲みほしたユノはそのまま天を仰ぎ、



もう一度チャンミンを見つめた………。








口角から流れ出るのは…ワインなのか…それとも………。




『ユノ……さん…………』




『チャン………ミン…………………生きろ………………』




震える頬に笑みを浮かべながら、



一言だけそう言ったユノは、


チャンミンに向かって小さく……小さく頷いた……………。







そして次の瞬間……、





グラスが床に落ち砕け散る音と共に…、




その身体が崩れ落ちた……。









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