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海賊に恋をして 62

何故…ここにチャンミンが……。

生きて欲しいと願い、決して離したくないその手を離したその人が…なぜ…この城の中に……。




『チャンミンっ!!』


ユノが駆け寄ろうとした瞬間、

ユノの後ろに居たはずの兄がその行く手を遮る。


『おっと…。

ユノ…お前は何も分かっていないようだな……』


そう言って兄はじわりじわりとチャンミンに近付く。


口角をにやりと上げながら、

ユノとチャンミンの間に立ちふさがり、すっと剣先をチャンミンへと向けた。


『こいつがお前の一番大切なものだってなぁ…ユノ…』


そう言いながらチャンミンの顎に手を掛け、その顔をしっかりとユノへと向ける。



『くっ……』


無理矢理にあげられたチャンミンから零れた声……。



『こいつが…お前の弱点…そうだろう…?』


そう言いながら、再びユノへを向けた視線。

そして、再びにやりと上がった口角に、
ユノは背筋が凍てつくのを感じた。




そう……誰よりも大切なもの……


自らの命に代えても守りたいもの……


そして…、


この世で一番……愛している人…………。


そのチャンミンが両手を乱雑に縛られ、

口にぐっと押し込まれた布で顏が歪んでいる。

その布に俄かに浮かんだ血が…ユノの視線に突き刺さる。


『…チャンミン…どう……して……ここに………』



ユノは目で問うた。


どうしてここに居る………


どう……してっ………お前がここにっ!!




『んぐっ……ぐっ!!』


『おっと…かわいこちゃん…大人しくするんだな……』

その言葉を合図にしたように、

兵の2人が床へと伏せっていたチャンミンの両脇に腕を入れ、
無理矢理に立たせる。


立ったことで露わになるチャンミンの姿…。



引き裂かれた服。

傷を負った頬……。

指で梳いても引っかかりのなかったあの髪が乱れている………。


それでもチャンミンはその大きな瞳でユノを見つめた。





『チャンミンに…なにをした……』




ユノの低い声が地を這うがごとく部屋の中に響く。



『城へと迷い込んだ子猫ちゃんを捕まえるのに少々手間取ったようでな…』


そう言って兄はゆっくりとチャンミンの後ろへと立つ。

『可愛がっても良かったが、こいつは少々頑固なようだ……。

いや…躾を受けていない野良猫……だったかな…

自分に触れたら舌を噛み切ると言ってなぁ……。


それでは面白くない……。


だから、あまりに煩い猫を…我が兵士が少々乱暴に黙らせただけ………

安心しろ。

手は付けてない。』

そう言ってほくそ笑みながら、
兄の手がチャンミンの髪を掴み、その顔をユノへと見せつける。


チャンミンの頬が…腫れている……。

赤い血が流れた痕がその頬にきらりと光る。


『お前っ……!!』


『殴っただけだよ、ユノ』


『許さない…絶対にお前だけは許さない!!』


そんな姿でもチャンミンは決してユノから目を逸らさない。

その大きな目で…必死になってユノを見つめる。


ユノはチャンミンのその姿に、
腹の底が沸騰しているかのように熱く震えるのが分かった。


『絶対に許さない……絶対にっ!!』


ユノは手にしていた剣を風のごとく構える。

剣先を兄の喉に向け、目には血が流れるかの様に力を入れて……。



『チャンミンに触れるな…。』



その言葉に兄はにやりと笑う。


『汚い手でチャンミンに触れるなっ!!!』


ユノがその剣を手に兄に向かった瞬間、


チャンミンの喉元に兄が手にしていた剣先がすっと伸びる。



その腕と剣でチャンミンを囲う様に……。




『くっ!!』


『ふっ…ユノ…お前はやはり弱い。

心が…弱いのだ。

こうして大切なものを目の前にしては、この兄を討つことも出来ぬ。

憎くて憎くてここに来たのだろう?

それでも今は…目の前に居るこの兄さえも斬れない。


この者がいかにお前にとって大切とて、

この国を守りに来たのだろう?

憎い俺を討ちに来たのだろう?

でも今、お前はなにも出来ぬではないか。


人一人の為に、
お前はその剣で俺を討つこともできない。

そんな王などこの国には要らないのだ。

それがお前が王になれない理由。

弱い王子など要らぬのだ…ユノ。


私なら敵を討つ。

迷わずにな。

過去のお前に、俺がそうしたように…だ。




………ユノ…俺はお前が邪魔なのだ。


憎いのだ。


父の愛情を全て受けていたお前がっ!!!


どんなに大切でも…それが例え血を分けた兄弟であろうと、

この国の王になれるのならば、俺はお前を斬る。



俺には自分より大切なものなどないのだ…ユノ。


お前に俺を斬る事は出来ない。

だが、俺は迷わずお前を殺す。

それがお前と俺の違いなのだ………。


お前はここで死ぬのだユノ……。


そして、この者も守れないだろう』


兄の剣がチャンミンの首に押し付けられた。

その皮膚に確実に触れる程に……。







憎い…憎い……。

父を…国王を破滅へと追い込む兄が。


憎い……憎い………。

チャンミンを俺から奪おうとする兄がっ!!



それでもチャンミンの首に押し当てられた剣が確実にチャンミンの首へと食い込む音と、

そこから流れる血が…ユノの身体を動かす事が出来ない。


顔を無理矢理上げさせられているチャンミンに……何もしてやる事ができない…。


剣を握りしめている手から、

ギリギリと鳴り響く音だけが2人の間を流れて行った……。




『ユっ…ユノっ……さん…………』


その音に紛れ、それでも確かに聞こえたのはチャンミンの声……。



『ユっ……の……さん……ぼくは……いいから……斬って………

この……国を……たす……けて………』


顎を上に向けられ、口を布で塞がれながらもなお、必死に言葉を紡ぐチャンミンの声……。



今にも消えそうな程の声が、ユノの耳に届く。



『チャンミン……』


『ごめ…っつ……なさい………………

ユノ…さん………ご……ごめ…ん…なさい……』





『黙れ小僧っ!!』



『ぐっ!!』



一人の兵がチャンミンの腹部にその拳を叩きつける。


『やめろ!!!チャンミンに触るなっ!!!』



ユノが再び剣を構えた瞬間、



『勝手な事をするな。』


そう言って兄はチャンミンを殴った兵を無表情で斬り付ける。


色を持たない凍てつく瞳のまま、

なんの躊躇いもなく片手でいとも簡単に………。



チャンミンの額に飛び散った血……。


チャンミンはあまりにも衝撃的な瞬間を目の前に、

今にもその身体が崩れ落ちそうになる。



『ユノ……ここがお前の最期の場所…そう言ったはず。

この愛しいチャンミンとやらと一緒にな……。

一緒に死ぬ場所を与えたんだ。

優しいこの兄に感謝するんだな。


だたし…簡単には殺さぬ。

それでは…面白くない。



……お前にチャンスをやろう。


このゲームに勝ったら、
この者だけは生かして城の外に出してやろう。



ただし、お前がゲームに負ければ、

お前はこの者の前で死ぬことになる。

お前が目の前で死んだら…この者はどうなるかな……。

ちゃんとあとは追わせてやるが、それはお前の死にざまを見せてからだ………。

この者の泣き叫ぶ姿も…それはそれで楽しみだ。』


チャンミンの首に押し当てられたいた剣が外され、

その代わりに自らの腕でチャンミンを囲う。




『死んだはずのお前が今ここに居る。

2度と会う事はないと思っていたお前が…。


この国に王子は2人と要らぬ。

この国の王になるのはこの俺だ………。


お前には…死んでもらう。


ここでな………。』



そう言って兄はチャンミンの口を塞いでいた布を解く。

一気に流れ込んだ空気に咽ながらも、



『ユノっ…さん…やめて…そんなゲームなんか…止めて……!!

僕は……僕はここで死んだっていいんだ……

あなたとならここでっ!!

あなたと一緒に……最後まで一緒に………』


チャンミンの叫びにも似た声が部屋の中に響き渡る。


その大きな瞳に溢れんばかりの涙を浮かべながら、

チャンミンは必死に言葉を紡ぐ。


『僕は一緒に……最後まで一緒に…あなたと居たい…んだ………』


『チャン…ミン……』


『お願いだから…止めて……』


『ユノ…決めるのはお前だ。

ゲームに勝てば、この者だけは生かしてやろう。』


『ダメっ!!ユノさんっ…!!僕も一緒にっ!!

あなたの居ない世界なんて…僕にとっては死ぬことと一緒なんだよっ。

だからここに来た…


だからここに来たんだっ!!!』



『ふっ…くだらない感情だ。

まぁ…いい。

決めるのはユノ、お前だ。

さぁ、選ぶがいい。


そこにワインの入ったグラスが5つある。

その中に一つだけ毒が入っている。

最後まで毒入りを飲まなければ、この者だけは生かしてやろう。


但し…最初の1杯で死ぬ可能性も十分にあるが、

最後まで毒入りを選ばなかったら、

最後のお別れだけはさせてやろう。

どちらにせよ…お前を生かすと言う選択はない。


それでも、


この者の為に最後の賭けをするか……?



さぁ…ユノ。

やるのか……やらないのか……。


それはお前が決めるのだ。』




ユノは一瞬だけ…床へと視線を落とす。


そして何かを覚悟したかのように、

その瞳がチャンミンを捉えた。



その瞳は矢のように真っ直ぐ。


チャンミンですら見た事がないほどに強い眼差しがそこにはあったのだ。




『ユっ……ノさん…………?』



『チャンミン…お前は…俺の命……そのものだ。


だから…分かるだろ…チャンミン………』


『やっ…だ……』





『さぁ、ゲームを始めよう………………』




ユノの声が………僅かに灯りが灯る部屋の中に静かに響き渡った……………。





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